津田屋の息子





「つめたーいっ。」




まだまだ肌寒さが残る初春。
りんは冷たい水の中に手を入れながら野菜を洗っていた。



「よしっ!これくらいでいいかな?」
そう言って水から手を出すと、寒さで赤くなった両手を擦り合わせ息を吹きかける。



早く暖かくならないかな〜。

そんなことを思いながら腰を上げたその時。








「おいっ。」

後ろから聞こえた声にりんは振り返った。








「やっと見つけたぜ。」




「あなたたちは……。」
そう言って あっ! と小さく声を上げる。




「あのとき市で会ったっ…。」




そこにいたのは、以前市で会った“津田屋の息子”、そしてその後ろには前回も一緒にいた仲間らしき少年二人…。



「お前なかなか良い着物着てたからよ、俺はてっきりどこかのお嬢さんだと思っていたけど…。」
そう言いながら津田屋の息子はりんに近付き話を続ける。


「まさかこんな貧乏村の村娘だったとはな。通りで知り合いを当たっても見つからねぇわけだ。」
微かに口角を上げそう言うと、それに続いて後ろ二人もケラケラと笑った。




「たかが村娘の分際でこの俺様に楯突くとは…。」










「随分いい度胸してんじゃねぇーか。」
そう言って触れるか触れないかぐらいまで顔を近付けてきた少年に思わず肩をビクつかせたりん。



以前会ったときは暗くて良く見えなかったその顔も、今ならまじまじと見ることが出来る。

細くて吊り目がちな瞳。
筋の通った鼻と薄い唇。
特に白くもなく黒くもない、健康そうで綺麗な肌。

そして顔から下に目をやればその黒い上質な着物が目に入り、やはりこの人はお金持ちの息子なんだ、と改めて認識した。



「お前前に会ったときもそうだったが、なぜただの村娘如きがそんな着物着てんだ?どっかから盗んだのか?」
りんの肩を掴みその着物をまじまじ見詰める少年に
「違うよっ!」
と慌てて口を開く。


「これは、貰ったものだから…。」
りんがそう言うと、へぇ。とさも興味無さげに言い少年はりんの肩を離した。




「ところであなたたち、わざわざあたしを探してここまで来たの?」
りんの質問に あぁ。と短く返事をする少年。


「お前は自分の身分ってのを分かっていないようだからな。それを叩き込まなきゃ津田屋の名折れだ。」
強い口調で放たれた言葉にも、まったく動じることなく
「そうそう津田屋ってさ。」
とりんは話を切り出した。




そして…。








「一体何屋さんなの?」




そう言った瞬間、津田屋の息子は微かに目を細め、後ろにいた少年二人は顔色を変え目を見開いた。




「貴様っ!!馬鹿にしてんのかぁあっ!!」
一瞬の間を置き、後ろにいた少年のうち一人がりんの側まで歩み寄りその肩を掴む。


「えぇ!?」
驚いて目を丸くするりん。


なぜこの人は怒っているのか。
自分はまた何か変なことを言ってしまったのか?

必死で考えを巡らせてみるがよく分からず…。






と、そこに。








「おめぇら何してんだっ!!」




「犬夜叉さまっ!?」
今度は突然空から降ってきた犬夜叉に驚いた。




「男三人が寄って集りやがってっ!!一体りんに何の用だ?」
犬夜叉は驚くりんを背に少年たちの前に立つ。


「なんだ貴様っ!?妖怪かっ!?」
りんの肩を掴んでいた少年は、驚きながらも口調の強さはそのままに声を荒げた。


「おめぇらこそなんだ!?まさかりんに妙な真似してねぇーだろうなぁ?俺は知らねーぜぇ?」
そう言ってりんを振り返ると軽々しくその体を抱き上げる。


「おいっ!そいつをどこに連れてく気だ!?まだ話は終わってないぞっ!?」

「ごちゃごちゃうるせーなぁっ!!こんなところあいつに見られたら、おめぇら殺されっぞ?」
犬夜叉はりんを腕に抱いたまま 居合わせたのが俺で良かったなっ。 と言い残しその場を飛ぶように去って行った。
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