新参者




「なんだろう…?」
ひょっこりと細い路地に顔を覗かせる。

「ん?どうしたの?」
さきも釣られて路地に顔を出した。



「可哀想だな?貧乏息子はそんな布切れしか着られなくてっ!!」

「う"っ!なんかこいつ臭せぇな?やっぱり貧乏は風呂にも入れねぇのか?」


りん達から見えるのは、二人の少年の背中。
そしてその奥で尻もちを付き、ただ黙っている一人の少年。



「おいおいそこらへんにしとけよ?あんまり関わると…。」









「貧乏が移っちまう。」
尻もちを付く少年の更に奥から出てきた、もう一人の少年。


少年はニヤリと笑いながら、尻もちを付く少年を見下ろした。






ひどい…。


考えるより先にりんは足を踏み出した。



「だめっ!!」
そんなりんの腕をさきが掴む。

どうしてっ!?と言わんばかりの顔でりんが振り返った。


「あいつらはきっと、いいとこの坊ちゃんだよっ!逆らったら何をされるかわからないっ!」
さきは真剣な表情で言った。 が、

「そんなこと言ってる場合じゃないよっ!」
りんはさきの手を退けて路地に入って行く。

「あっ!りんっ!」
さきが止めようと声を掛けたのも虚しく、りんは堂々と少年たちの目の前に立った。



「ちょっと止めなよっ!三人で一人の子虐めるなんて卑怯だよっ!」

「あぁ?」

突然の登場に、四人は一斉にりんへと視線を向ける。


「誰だお前?」

「凡人の出る幕じゃねぇーんだよ!」
手前二人の少年がキリッとりんを睨み付けた。

しかしそんな二人をには構わず
「こんなことするなんて酷いよ!」
とその間を割って入る。


そして、 大丈夫? と尻もちをついている少年に手を差し出した。


「てめぇ聞いてんのかよっ!!」
りんの平然とした態度に腹を立てた少年が、勢い良くりんに歩み寄った。しかし…。



「止めろ。」



一番奥にいた少年の一言で、ピタッとその足が止まる。


「でもっ…!」
「いいから。」


少年は渋々一歩後ろへと下がった。



りんはゆっくりと声のした方を見上げる。


遠くからでは良く見えなかったが、近くに来ればはっきりと分かる、



その身分。


後ろを振り返ると、不機嫌そうな顔でこちらを見詰める少年二人。

彼らも上の身分の者なのだろう。


小綺麗な着物を着、食べ物に困ったことなどない、肥え太ったお腹が着物の上からでも分かった。


特に今目の前にいる少年は、かなり高級そうで上質な着物、太ってはいないが、栄養バランスの取れた食事をしているであろう健康な体つき。
そして後ろ二人に対して命令口調だったところからして、その身分はかなり高いと言うことが伺えた。



「おいっ。」
目の前にいる少年の声でハッとするりん。


「お前、もう行っていいぞ。」
尻もちをついている少年に冷たく言い放つ。


少年はりんに礼を言うでもなく、慌てて立ち上がると走ってその場から立ち去った。


「おいっ、本当にいいのかよ?」
後ろにいる少年が不満気に言う。


「あぁ、次の標的を見付けたからな。」
目の前にいる少年は、そう言ってニヤリと笑った。
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