理を越える想い
月明かりが森を照らし、辺りは淡い光に包まれる真夜中。
焚き火の火さえもとうに消え失せ、森の中は不気味なほど静寂を保っている。
そんな中、りんは大木に寄り掛かかりながら眠れずにいた。
何を考えるわけでもなく、ただぼーっと眠気が訪れるのを待つ。
と、そこに――…。
―サクッ……―
りんの横を、殺生丸が通り過ぎた。
殺生丸さま…?
りんはその背中を見つめる。
どこ行くんだろう…?
そう思いスッと体を起こすと、隣で熟睡している邪見を置いて後を追った。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
少し開けた場所に出ると、殺生丸は足を止めた。
そしてスッと上を向き、輝く満月を見つめる。
そんな様子を、りんは木に体を隠すようにして覗いた。
何してるんだろう…?
そう思った矢先――…。
「眠れぬのか?」
「えっ…!」
りんは驚いて、ビクッと肩を跳ね上げらせた。
こっそりあとを追い、気付かれぬよう木に身を隠していたつもりだったのだが…。
「気付いてたんだっ…。」
少しがっかりしたように言うと、りんは木から離れ殺生丸に近づいた。
「何してるの?」
殺生丸を見上げ首を傾げる。
「どこかへ出掛けるの?」
何も答えない殺生丸に、りんは更に質問した。
「邪見の元へ戻っていろ。」
月に目をやったまま答える殺生丸。
しかしりんに戻る気など更々ない。
「りんも一緒に連れていって!!」
その言葉に、殺生丸はようやく月から目を外しりんを見下ろした。
「お願いっ!!目が覚めちゃったの。」
胸の前で両手を合わせ、殺生丸を見上げるりん。
「冷えるぞ。」
どうせ無理だと思っていたりんは、その言葉に目を輝かせた。
「うんっ!!!大丈夫っ!!!!」
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