愛のかたち
「君の気持ちが分からない」
それは仕方の無いことね。他人の気持ちが本当に心から分かる人なんて、この世に存在しないもの。皆、他人と接しながら自分の記憶と照らし合わせて気持ちを予想しているだけ。それが鈍いか鋭いかの違いよ。
「分かってる、分かってるさ。それでも僕は君の気持ちを知りたいんだ。例え予想だとしても」
どうして?
「君を愛してるから」
愛、愛ねぇ。
愛なんて所詮はまやかしよ。時間が経てば赤い糸なんていとも簡単に解けて、互いへの愛情なんて成立しなくなるのだから。
「何を言うんだい、愛はこの世の真実さ。どんなに嘘吐きで人を欺いてきた人間でも、愛する気持ちだけは裏切れない。愛は人を素直にするんだよ」
貴方は愛に夢を見すぎているのね。
貴方が思うほど、愛は絶対じゃないのよ。
「いいや、愛は人にとっての絶対さ。だってこんなにも心を焦がして僕を苦しめたり喜ばせたり出来るのだから。
愛する人の言葉一つで僕を生かすことも殺すことも出来るのだから、恐ろしいよね。ああでも、愛に殺されるのなら悪くはないかもしれないね」
貴方、狂ってるわ。私が死んでと一言頼めば本当に死んでしまいそう。
「それが君の願いなら、僕は喜んでこの命を投げ出すよ。君を愛してるからね。
ああそれと、僕は狂ってるわけじゃない。愛に従順なだけさ。愛は人を本能に忠実にするんだよ」
そう。
貴方って、とても純粋なひとなのね。
ところで貴方、
誰?
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(20100121)
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