エドワード・エルリックとアルフォンスハイデリ











僕の同居人は目立つ人だ。
頭脳明晰、華やかな容姿、だがそれらを鼻にかけない性格。
目立つ人、と言うよりもてる人の方が正しいかもしれないな。
大学で、研究室で、近所のビアホールで……視線を集める彼。
今だって大学の研究室に来るまでに何人に声を掛けられたことか。

「エドワードさん。」

「エド!」

声を掛けられれば彼は笑顔で応え、気さくに手を振る。でも知ってる?
彼は、エドワードさんは誰にも心を開いていないんだよ。
だからそんなの無駄。

「エドワード、論文見たよ。本当に素晴らしい理論だった!今度、ゆっくり話しがしたいな。」

「そうか?詰めてないとこも有るんだけど……ありがとな。」

緊張からか震える声で話しかけた学生にヘラリと笑い返す。
顔を真っ赤にした学生は嬉しそうだ。
だから、無駄なんだって。
口の中がじわりと苦くなる。僕はエドワードさんの袖をグイっと引っ張った。

「エドワードさん、講義が始まっちゃうよ。」

「……ん?そうだっけ?じゃあな。」

名前も知らない学生に手を振ると僕達は肩を並べて歩き出す。
しばらく歩いてからあっ、と声をあげるエドワードさん。

「アルフォンス、一限の講義……今日、休講って話しだったよな?」

「あれ……そうだった。ごめんね。」

エドワードさんをあの場から離すための嘘だったけど、いかにもうっかりしてたと言う顔をすれば、苦笑を浮かべたエドワードさんが僕の顔をじっと覗き込んだ。

「疲れてるんじゃねえか?大丈夫か?」

澄んだ琥珀色の瞳に、僕のくだらない嘘なんて簡単に見破られてしまうのではと心配になる。
僕はすっと視線を外すと大丈夫、と呟いた。

「そっか。なら、いいけど。最近難しい顔してることが多いからさ……心配で。無理するなよ?」

「ありがとう。エドワードさんは優しいね。」

『こちらの世界』で唯一、僕にだけは心を許してくれているエドワードさん。
弟に似ていたから、父親が失踪して途方にくれていた彼を助けたから、あちらの世界の話しを否定も肯定もせずじっと耳を傾けるから、たくさんの信用を勝ち取っての今の関係だ。
綺麗で純粋で強くてそして寂しがりやのエドワードさん、それを知っているのは僕だけで良い。
エドワードさんは僕に心を許してくれている、でも僕の本心はまだ1ミリも見せたことが無い。











end







リゼ