エド兄ちゃんと弟達。















きゅん、

なんて胸がときめいた。
俺は一体どこの女子だ。

「エドお兄ちゃん?」

「か、かわ……!」

混じり気の無い真っ黒な髪に同じ色をしたつぶらな瞳。小さな手が俺の裾をくいっと引っ張って微笑んだ。

「かわいい……!」

弟のアルとはまた違った可愛さだ。
アルが天使ならこいつは妖精だ。

母さんの友達夫婦が仕事の関係で海外に行くという。少々物騒な環境と多忙と言うことで帰るまでの数年間、こどもを託された我が家。
その子がロイ・マスタング6歳。今、俺の目の前にいる子だ。

「よろしくな。あんま気使うなよ。本当の兄ちゃんだと思ってくれていいからな。」
俺より低い位置にある頭を撫でる。

「ありがとう。エドお兄ちゃん。僕嬉しいな!」

にっこり笑顔が可愛くてデレデレして。
夜は怖いと言えば添い寝したり。寝坊したら寝癖を直したり。手を繋いで買い物にいったり。勉強をしたり。アルがやきもちをやいて甘えてきたり。
弟達のお世話が出来る日々は楽しくて仕方ない。

「エドお兄ちゃん!」

「兄ちゃん!」

ホームルームを終えた教室に響く声。教室の入口から天使と妖精……じゃなくてアルとロイが手を振っていた。

「二人とも迎えに来てくれたのか?」

一年生の二人が三年生の俺の教室まで迎えに来てくれた時は感動ものだった。

「うん。一緒に帰ろ。」

「昨日おこづかいもらったからエドお兄ちゃんとアルと一緒にアイス食べに行きたいな。」

「よし、兄ちゃんが二人に買ってやるからな!」

「わーい!兄ちゃん大好き!」

「僕もお兄ちゃん大好き!」

可愛い弟に囲まれて俺は幸せだった、のに……。

「時の流れって残酷だー。」

俺の両隣にはガタイが良い男が二人。
いつの間に俺を越したんだ、弟達よ。

「ため息なんてついてどうしたの兄さん?」

屈んで俺の顔を覗き込むアル。

「体調悪い?」

優しく肩を抱くロイ。
そしてどこからか響く黄色い声。
背も高く、成績優秀、スポーツ万能、今風に表現すればイケメンに育った二人は女子達に大人気で。
二人に挟まれて歩く俺を刺す女子達の視線が痛い。いやいや、なんで目の敵にするんですかお嬢さん方。俺はこいつらのお兄さんですよ。

「あー……大丈夫。それにしても二人とも、昼休みに毎日俺のとこ来なくてもいいだろ?」

昔はお兄ちゃん子とよく言われた二人は高校生になった今でも俺にべったりで。
少し甘やかし過ぎたかなと頭が痛くなった。

「え?エド兄さん迷惑?」

「……そうだよね。迷惑だよね。ごめんね。」

途端にしゅんとする弟達。

あ、だめだ。やっぱり可愛い。いくら俺の背を越そうが俺よりモテようがそれがどうした。可愛い弟には変わり無い。

「そんなことないから!ほら、学食行こうぜ。」

俺がニッと笑いかけると二人して抱き着いてきた。

「兄さん大好き!」

「俺もエド兄さん大好き!」

「もう甘えやがって。可愛いなー。」

二人に揉みくちゃにされながらも甘えられて嬉しい俺。ん?今、ロイの手が尻を触ったような?気のせいだよな。

「おーお前ら相変わらず仲良いな。」

「ジャン。俺の弟可愛いだろ?」

友人は弟二人に苦笑いを向けた。

「……鉄壁のガードだな。まぁ頑張れや。俺がいただくけど。」

「へ?」

俺の頭をポンと叩いたジャンはひらひらと手を振って去って行った。

「ふーん。」

……アルフォンス、笑顔なのに殺気がするのは気のせいかな。

「良い度胸してる。」

……ロイ、何その顔。怖いんだけど。

可愛い弟達に囲まれて毎日幸せ。
だけど最近、騙されている気がするのは気のせいだろうか。









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いくつか続きを書いてみたいなー。



リゼ