我が儘(リンエド)
俺は不老不死の秘法を探しにきた筈が一人の人間に夢中になっている。
名はエドワード・エルリック。小柄な少年だ。
心が綺麗だと思った。
金糸の髪に琥珀色の瞳、容姿が美しいと思った。
兄貴風を吹かせたり、些細な事で怒ったり笑ったり、気質が可愛らしいと思った。
思ったら欲しくて欲しくてたまらなくなったんだ。幼子が玩具を欲しがるのと一緒。欲しい物しか目に入らなくて、ただ夢中になる。
皇子として自らの欲は今まで持った事は無かった。全ては守るべき民の為。
「どうしよー。欲しいなァ。」
一生に一回だ。初めての我が儘だ。許して欲しいと誰かに詫びる。
誰に詫びるのだろうか。自分?仲間?一族?それともエドワードに?
「……一緒にシンに帰ってくれないかナァ。」
「ん?リン、呼んだ?」
「…………ビックリしタ!エドワドさん、気配消さないでヨ!」
「さっきから気難しい顔してなんか考えこんでたのお前だろ?あのな、ここは俺が借りた宿!部屋!」
いつの間にか隣に座っていたエドワードに目を見開く。
そんなに俺は考えこんでいたのか。
「アイヤー……ごめんネ。失礼しましタ。」
本人を前にしたら思考がますますまとまらない。俺は一先ず退散する事にした。
「……リン、待て。」
立ち上がった俺の手はエドワードに強く引かれた。咄嗟の事だったのでそのまま引っ張られ再び着席。
「何?あーさっきのご飯代?ゴメンネー。フーに話といテ。」
「違う。なぁリン、」
エドワードは俺の頬に両手を優しくあてる。頬に伝わるひんやりとした鋼とじんわりとした温もりが不思議だ。
「なんでしょーカ?」
至近距離にあるエドワードの可愛らしい顔に柄にも無く心拍数が上がりそうになる。思わず力んでしまい、顔は朱くなっているかもしれない。
「目の下、クマが酷いぞ?その……なんだ……、お前一応さ、皇子だし沢山抱えている物もあるんだろうけどさ。話ぐらい聞いてやれるぞ?」
心配そうに顔を覗きこまれ、優しく目尻を撫でられる。
アンタが欲しくて悶々として寝不足でした、なんて言える訳が無い。
兄貴風を吹かせて心配しているエドワードに言える訳が無い。
「しんどいけど、大丈夫だヨ。」
「ん。そっか。でも無理するなよ?……今日は遅いしこの部屋泊まっていけば?」
「え!?良いノ?」
「ああ。今、ストレスにいいお茶煎れて来るからゴロゴロしてたら。」
完璧にお兄ちゃんモードになっているエドワード。そうか、この手があったか!
優しく世話をやいてくれるエドワードに甘えながらニヤニヤしている俺。この時、浮かれ過ぎて忘れていた。
ブラコン兄貴の弟も当然、ブラコンだという事を。しかも兄貴と違って弟は真っ黒だ。
「エドワドさん、一緒に寝てイイ?」
「ホームシックとかか?リンもまだまだこどもなんだなぁ―。良いよ。」
end