変態と被害者














「エドワード!」

全速力で廊下を駆けていく軍人。

「エドワード!」

その真剣な表情に誰もが圧倒されて道を譲る。

「エドワード!」

将軍地位の人間がどうして……もしかしたら緊急事態なのか。必死の形相の将軍に慌てた軍人何名かは内線を使って確認する始末。
一方、将軍はお目当ての人物を視界に捉えると思いっきりタックルした。

「グフッ……」

「ああ、エドワード。マイハニー!お帰り。」

いきなりのタックルに思い切り腰を打った少年はしかめっつらで腹部に抱き着く男を剥がした。剥がそうとした。だがうっとりとほお擦りをするそれは、なかなか剥がれそうにない。

「ロイ・マスタング将軍、離れろ。」

冷たい声でそう告げるとロイはようやく腹部から顔をあげた。

「やだなぁ。他人行儀な。この前、ロイもしくはあなたと呼べと言っただろう。」

「焔の錬金術士、退け。」

「照れ隠しかね?まったく、君は本当に可愛らしい!」

うっとりとした表情のロイにエドワードは鳥肌が立つ。

「助けて!ホークアイ大尉!」

廊下にエドワードの声が響いた。

「フム、皆も待っているよ。執務室に向かおうか。」

以前は助けてくれたホークアイも、めったな事が無ければ来なくなった。
ズボンを引きずり落ろされそうになったり、キスを強要されそうになったり……そんな時は銃を構えたホークアイが助けてくれた。
最近では変態は殺しても直らないからエドワード君ごめんなさいね、と上司の更正を諦めている様子だ。

「あのさ、」

「なんだい?エドワード。」

旅に決着が着いてからだ。ロイがエドワードに猛アタックを開始してから半年。バラの花束や熱烈な歓迎、歯が浮きそうな恥ずかしい口説き文句。最初はからかっているのだろうと思っていたが半年もだ。恐ろしい事に相手は本気だとエドワードは気がついてしまった。

「何で俺なの?」

隣をニコニコしながら歩くロイ。エドワードは不思議でならない。なんで自分のような男でこどもで可愛いげのかけらもないやつを好きになるのかと。

「君の強いところも弱いところも全てに一目惚れしたんだ。」

見上げれば視線が交わった。熱を含んだ瞳が恥ずかしくて慌てて視線を反らす。

「それ、この前も聞いた。俺、あんたに出会った頃何歳だったって。……変態。ショタコン。」

「変態……ね。では変態は変態らしく失礼。」

ニンマリ笑ったロイはエドワードの太股をスルリと撫でた。

「っ!セクハラで訴えるぞ!」

「相変わらず素敵な弾力だ。ああ、エドワードの太股に挟まれたい!」

「死ぬか?よし、死にたいんだな!」

エドワードが片手を振り上げロイを追う。笑顔で逃げるロイ。
そんな二人を見守る女性が一人。

「エドワード君、少しずつほだされているわね。」

度重なるエドワードのセクハラにホークアイが説教を行っていたある日、ロイは真っ直ぐな瞳で言った。

「エドワードに逃げ道を残してやらないと。」

だからと言ってあのアプローチの仕方はどうなのか。
ホークアイはため息をつくと少々やり過ぎな上司に釘を刺すべく愛銃を片手に後を追った。













end……?



続くかもしれない。




リゼ