start(ハボエド)
「ジャン兄!」
いつ東部に戻ってきたんだろうか。危険な旅を心配しているのだから連絡のひとつぐらい寄越せといつも言い聞かせているのに。
笑顔で駆けて来る金色に、一瞬そんな恨み事が浮かぶ。だが、久しぶりに会うこどもが怪我をしていない様で安心した俺は、駆けてきたエドワードを抱き上げた。
「久しぶりだな!エド!」
「ジャン兄、高いって!ガキじゃないんだから下ろしてよ!」
口ではそんな事を言いながらもエドワードは柔らかな頬を俺の首筋に擦り寄せた。まったく、可愛いなあ。
「あー……ジャン兄の匂い。なんか落ち着くー。」
そう言って両腕を俺の背に回すとコテッと体を預けてきた。もしもこいつが猫だったら今はゴロゴロと喉を鳴らしているのだろうか。
「ガキ……と言うか、猫?」
「は?」
「猫だな。子猫。」
「何?何?もしかして俺の事?」
一人納得して頷く俺に、エドワードは不服らしい。
俺の髪をギュッと引っ張ると膨れっ面で睨みつけてきた。
まったく、短気な所も可愛い。
「あー……まだ言ってなかったな。おかえり、エド。」
そう言って俺は小さな額にキスを落とす。
「なんだよ。ごまかしやがって……、ただいま。ジャン兄。」
久々のキスにくすぐったそうに笑顔を浮かべたエドワードは、
「……やっぱジャン兄好きだなー。」
俺の頬にキスをするとこんな可愛らしい事を言ってきた。
「俺も好きだよ。」
ギュッとエドワードを抱きしめていると、冷たい視線が飛んできた。
ああ、大佐とアルフォンスだ。
「アルフォンス君、本当にあの二人はあれで付き合ってないのかね?」
「兄さんは良いお兄ちゃんとしか思ってないみたいですけど……」
好き勝手言ってるなあ……
いやいや、まだこれからだよ。
俺は口角を上げると、余裕の笑みで二人を見返した。
end