冬ですか?












「寒いね。」
「寒いな。」
気が付けば季節は秋だ。
雪をかぶった並木はいつの間にか桜並木に、桜並木はいつの間にか若葉の並木に、若葉の並木はいつの間にか紅葉の並木になっていた。
風に揺られて空にひらひらと舞うのは赤に、黄に、薄茶の落ち葉。鮮やかなその光景は、だけど寒い冬の訪れを告げている。
「もうすぐ1年立つなぁ。」
感慨深くて堪らない、そんな口調でスーツの男が呟いた。
「ちょうど、あの街灯の下だったかな。」
隣を歩く学生服の少年は空を見上げながら呟くが、その声が笑いを含んでいたから、男はムッとして少年を見下ろす。
「エド、笑うことはないだろう?」
「だってロイ……あの時のアンタ最高っに!かっこわるくてさ。」
そう言って腹を抱えて笑い出すエドワードをロイは睨み付ける。
しかし、最高にかっこ悪い。自分でもその通りだと思うので反論は出来ない。
「雪で滑って転んで、後ろにいた君を巻き添えにした。」
「それが俺達の出会いだぜ?しかもあの時のロイの、うわぁあ!って情けない声……。俺は真冬日に制服を泥と雪まみれにされて最悪だったなぁ。家に帰ってから母さんにこっぴどく叱られたし!」
そんな出会いからもうすぐ1年たつ。
「まさかアンタと付き合うとは思わなかった。」
「私もだ。」
冷たい風に舞い上がる落ち葉。
いつの間にか季節は冬になってしまう。
「今年は転ぶなよ?もうすぐ三十路なんだから」
「今年も、来年も、再来年も、その先も……エドが受け止めてくれるから大丈夫だ。」
「はいはい。まったく……毎年雪まみれになれってか?」












end



リゼ