fa freddo(リンエド)










風が窓枠をカタカタと揺らす。
外を伺えば星すら見えない真っ暗な空が広がっている。窓にピタリとつけた顔が、その冷たさに鳥肌を立てた。今日は寒い夜だ。
「おい、何してる……」
「今夜ハ冷えるからネ。あたためておきましタ。」
風呂からあがりさっさと寝てしまおうとベッドに向かえば、そこには我が物顔で寝転ぶバカ皇子がいた。
「出てけ。」
「エー?こんな寒い夜に異国の路地へ、いたいけな子どもを放り出すノ?トモダチだロ?」
「うっさい。なにがいたいけな子どもだ。この老け顔。」
そう言ってヘラヘラと笑う顔を睨み付けるとうつ向いてしまう。
もしかして気にしていたのだろうか。まぁ良い。さっさとベッドから追い出して寝よう。
「……おい、リン。」
生身の片足が冷えを訴える。
「リン、」
薄着の体にひんやりとした空気が纏わりつく。
やはり今夜は寒い夜だ。
「……リン、さっさと端に寄れ。」
そう告げればリンは顔を上げ、にこにこにやにや。
「クソ皇子が!演技かよ!」
「マァマァ、寒いんだから早く入れバ?」
俺が借りた部屋なのに。俺のベッドなのに。腹が立ったが寒いものは寒い。俺はベッドに飛び込んだ。
「……あったかい。」
「言ったロ?あたためておいたっテ。」
じんわりと全身を包む温もりは久しぶりのものだった。懐かしいそれは幼い頃に失ったものだ。寒い夜に母さんとアルと3人で眠った優しい思い出が蘇る。
「エド、良い匂いがすル。」
「風呂、入ったからかな?」
バカ皇子が首筋に顔を寄せているが気にならない。
あたたかく心地よい温もりに今にも瞼が閉じそうだ。
「……ったく、リンのせいでせまいだろーが……」
そう文句を一つ吐くと瞼を閉じた。
あたたかく心地よい温もりと、優しい思い出に包まれて今夜は穏やかに眠れるだろう。
「あーあ、せっかく美人さんと同じ床なのニ……安心しきった顔してちゃ手が出せなイ……」









end






リゼ