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「ロイ……。」
耳を擽る甘い声。
頬にかかる柔らかな髪。
間近に感じる甘い匂い。
「早く起きてよ。……寂しいじゃん。」
胸元にギュッと抱きつかれ、俺は思わず目を開けた。
昨晩は会議と言う名の古だぬき共の飲み会に強制参加させられ、帰宅したのは深夜だった。作り笑いと、随分と飲まされた酒に疲労は限界で部屋に着くなりベッドへ飛び込んだ気がする。
まさか酔った勢いで女性を連れ込んでしまったのかと慌てて胸の中の人物を見つめる。
朝日にキラキラと光る金髪に、剥き出しの細い肩。その顔は拝めないがたぶん美人なのだろう。それにしてもこの温もりは……どうやら私も相手も全裸らしい。
「き、君は……?」
一晩過ごしたのであろう女性にこんな問いかけは失礼だ。
しかし、記憶に無い。連れ込んだ記憶が無いんだ。
「おはよう。ロイ。」
胸に埋もれていた顔がゆっくりと上げられる。
小さな顔にはやや不釣り合いな大きさの琥珀色。それが私を捕らえると柔らかに細められた。ああ、思った通り美人な……
「は、鋼の?」
「あーあ。寝癖ついてるぞ。」
驚きのあまり口をあんぐりと開けた間抜け面の私を寝ぼけていると勘違いした鋼のは、優しく寝癖を撫で付けてくる。
「なぁ鋼の。昨夜は……」
恐る恐る口に出す。頼む、何もなかったと言ってくれ。
だがその祈りは虚しく、鋼のは私の問いに頬をほんのり赤く染めてしまった。
「いじわるっ……。そんなこと聞くなよな。」
はい、つまりはそう言うことなんですね。
まさか一回り以上歳が離れた同性の部下を、酔った勢いで抱いてしまったなんて。しかも記憶が無いなんて。極めつけは私の胸元に擦り寄る鋼のが可愛いく見える。
私は意識が遠退く様な気がした。




end




リゼ