インヴェルノ



Γ寒い。」
そう呟いたエドワードの唇は青紫に染まっている。
微かに震える小さな肩。赤い鼻。コートのポケットにつっこんだ、かじかんだ手。
今にも雪が降りだしそうな凍えた空の下、エドワードは待ち続けていた。
約束の時間から1時間が過ぎ、それからは時計を見ていない。
もう何時間、彼を待っているのだろうか。
Γバカ大佐……早く来やがれ。」
伏せられた瞳にうっすら水が張っているのは寒さのせいだけではない。
Γギュッと抱き締めてよ。アンタはひたすら謝って、怒った俺を宥めるために温かなココア買ってくれて……」
冷えきった頬を何かが優しく撫でた。
Γっ、大佐!」
エドワードは慌てて顔を上げたが、それは降りだした雪。
Γ早く、早く、……早くじゃなくてもいいから来て。」
大粒の雪は街を、エドワードの赤いコートを白く染めていく。
Γ来てくれよ。お願いだから……俺は、アンタが好きなんだ。」
やがて、雪は止んだ。
だがエドワードの待ち人が来ることはなかった。




end


ふられたエド。






リゼ