primavera

今日は久々の休日だ。
毎日のデスクワークにうんざりしていた私は良い天気だし公園を散策することにした。
エドワードを誘ってみると嬉しそうに笑って弁当の用意を受けてくれた。


「ほら、おっさん!ちんたらしてると俺様特製の弁当食べさせてやらねぇぞ!」
振り返ったエドワードは、口元にイタズラな笑みを浮かべて後ろを歩く私を急かした。
「誰がおっさんだ。せっかく休みを取って公園にのんびりしに来たのだから良いだろう?」
子どもの君には分からないだろうがと、大げさに肩を竦めてため息を吐いて見せる。
「ハイハイ。じゃあお子さまなエドワード君はお腹が空いたので我慢できませーん!なので弁当一人で食べちゃいますよー!」
エドワードは片手を挙げて大きな声で宣誓すると、バスケットを片手に走り出した。
「ちょ、こら!待ちなさい!」
楽しそうな笑顔で走るエドワード。
「ふん。待ってやらないもんね!」
それを追いかける私。まるで子どもに戻ったように、夢中になって走る。
「あははは、無理すんなよ三十路!」
「君こそ、ロイ・マスタング大佐を甘くみてはいけないよ!」
「うっわ、早っ!」
ふざけながら、二人で走り回る。噴水、時計台、子ども達が遊ぶブランコの前、お兄ちゃんガンバレーと可愛らしい声援を頂いたのはどの辺りだったかな?
「ハァ……疲れた。」
「まったくだ……。」
二人同時に広場に座り込む。
柔らかな芝生が心地好くて仰向けに寝転べば青い空が視界いっぱいに広がり、緩やかな春の風が火照った頬を優しく冷ました。
「飯にしようか?」
エドワードは汗で張り付いた私の前髪を退けてくれる。
その優しい動きと、どこからか聞こえる鳥達の声に、何故か、
「……懐かしいなぁ……」
こどもの頃、両親と行ったピクニックを思いだし微笑んだ。
「ん?何か言ったか?」
「いや、別に。さぁ、お腹が空いたし食べようか。」
君はまるで母親みたいだね、なんて言ったらこの子は怒りそうだから誤魔化しておく。
「今朝、言われたから時間が無くてさ……」
簡単なものだけどと開けられたバスケットの中には色とりどりの具材のサンドイッチに果物。
「おいしそうだね。いただきます。」
そういって、手を伸ばす。
笑顔で平らげて行く私に、エドワードは微笑んだ。
「うまい?」
「ああ。」
「よかった。……あ、今持ってるサンドイッチ、ロイが嫌いなピーマン入ってるけど。」
「え?」
のんびりとした幸せな休日。
あたたかな春の日、また君とピクニックに行きたい。



end



春よ来い!早く来い!

リゼ