「ウエハースから宇宙に飛び出せ」


※学パロもどき


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10月下旬。
定期考査が近づき、ぼくら学生が、何となく鬱々とした気持ちを抱えだす頃。

下校途中、ぼくとイヴは一緒に課題をするという名目でカフェに立ち寄った。

ぼくは先に注文を終え、店の片隅、目立たない位置にあるテーブルでイヴを待つ。

「お待たせー」
コーヒーにスティックシュガーを何本か投入していると、彼が戻ってきた。
その手にはコーヒーと、

「…それ、食べるの?」
「食べるから注文したんだよ」

とにかく大きなパフェ、が。

「ほら、ハロウィンだし」

チョコレート、バニラアイスクリーム、果物、その他、見るからに甘そうなものが盛り付けられたグラス。たっぷりと乗せられたホイップクリームからは、ウエハースが所々、ちょこんと頭を覗かせている。

「…意外と甘党なんだね」
「あんたに言われたくないな。そのコーヒー、絶対甘ったるい。甘すぎて飲めたもんじゃない」

ぼくの前に散らかった砂糖の袋を見て、椅子に腰を下ろしたイヴはわざとらしく顔をしかめる。確かにぼくが甘党なのは間違いないけれど…。

「というか、それ一人で食べきれる量じゃない気がする」
「当たり前だろ。こんなに食えるかよ」
「それじゃ、何でこんなに…」
「紫苑とおれの、二人分」

イヴは平然と言ったけれど、言われたぼくは、そうはいかない。
え?二人で一つのものを食べるって、…あの。

「何で顔赤くなってんの」
「いや、だって…なんか」
くすりと笑うイヴ。
鮮やかな濃灰色の瞳が僅かに細められる。…これは、彼が何か企んでいるときの顔だ。

「紫苑」
「な、何」
「お菓子くれなきゃイタズラするよ」
「きみの前に沢山あるじゃないか!」
「だから、」

食べさせて?

ぼくの手にスプーンを押しつけ、イヴはそう囁いた。

「む、無理…」
「やった。何しても良いんだ」
「良くない!」
無駄に魅惑的な微笑み。何をされるか分かったもんじゃない。仕方なくぼくは、スプーンを取った。

「何でこんなこと…」
「嫌なら良いけど。その代わり、分かってるよな」
「うわ待って、やる、やるから」

クリームを掬おうとしたらウエハースが邪魔で…ぼくはスプーンを放棄した。指先でウエハースを一枚摘まんで抜き取り、そのままそれを、イヴの薄く開かれた唇に押し込む。
…早く終わらせたい一心だった。

もぐもぐとそれを噛みながらイヴは我が儘を言う。
「…おれ、ウエハース、あんまり好きじゃないんだけど」
「し、知るもんか!」
「まあ、あんたの恥ずかしそうな顔見られただけで満足」

唇の端についたクリームを舐めとりながら涼しげな目許を細める彼は、やけに妖艶に見える。

とにかくこれで、イヴの言う「イタズラ」をされることはないはず。
…けれど。
ほっと胸を撫で下ろしたぼくに、彼はにっこりと微笑んで言い放った。

「次はあんたの番」
「…え?」
「はい口開けて」
「いい!自分で食べる!」
「じゃあイタズラするけど」
「なっ…何でだよ!」


息抜きどころじゃない。
心拍数が上がりすぎてどうにかなりそうだった。




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20111029

*カフェのモデルは近所のスターバッ○スです(笑)私はちょっと入りにくいです(値段的な意味で)。パフェは何年か前に友達と悪ふざけで作ったやつを思い出しながら。あれは甘かった。書いたものプラス、金平糖までかけてた気がしますw美味しいわけがなかった(遠い目)
*支離滅裂で申し訳ありませぬ

*素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました!
*企画:迷路-maze-様(葉瑠様)

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