和泉家の長女、天然につき。
世間一般では桃の節句の呼ばれている今日。俺の誕生日でもある。大和さん主催のサプライズパーティでさんざん騒いで、そろそろパーティも終盤になってきた頃。寮のインターホンが鳴った。
「誰だ?こんな時間に。」
「さぁ…。僕が見てきましょうか?」
「やめとけ、ソウ。また住んでる場所を特定したファンかも知れない。」
「そうですね。放っておくのが得策でしょう。」
行こうとする壮五を止める大和さんと一織。この前の大和さんの誕生日の時は、ドラマの効果もあったのか、とにかく外にはチョコを持った女の子だらけ。俺達はそとにすらでられなかったのだ。(大和さんはと言うと、例の彼女の家に行ってイチャイチャしてた。)
そろそろ片付けるか、と大和さんが声をかけた時だった。ピンポーン。またチャイムが鳴った。
「またなったよ…?」
「なかなかしつこいですね…」
「ファンじゃねーのかもよ?」
「お?ファンじゃなかったらなんだと思う?タマは。」
「ゆーれい。」
その場がしんとなった。陸の顔がみるみる真っ青になっていく。それを見て大和さんが「そんなわけないだろタマ〜」と笑い飛ばす。
ピンポーン。
「ウワァァァまた鳴った!!」
「大丈夫だよ、陸くん。環くん、そんなのいないよ。」
「だって、こんな時間に来るのはゆーれいだけだろ。」
「だからと言ってだね…」
ピンポーン………ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
鳴り止まないインターホン。流石にまずくなってきた。もう泣きそうな陸を見て、壮五は「大和さん、やっぱり出ようよ。これは悪質すぎる…。」と眉を潜めた。さすがの大和さんも頷き、厳しい顔つきでドアの前に立った。俺達は固唾を飲んで見守る。ドアが開いた、瞬間だった。
「だ」
パーーーン!
何かが弾けるような音がして、咄嗟に目をつぶる。瞼をうっすら開けて様子を見ると、クラッカーの紙吹雪をもろに受けている大和さんと
「姉さん?!」
「いーちゃん!みっちゃん!」
なんと幽霊(仮)の正体は姉ちゃんだったのだ。陸だけではなく、他のメンバーもポカンとしている。
「姉さん!!!貴方という人はまたこんな夜中にどうして外に出るんですか!!!」
「え〜?だって今日はみっちゃんの誕生日だもん!お姉ちゃんだって祝いたかったの〜!」
「だったら昼間にこればよかったでしょう!!」
「そんな事したらケーキ作る時間がないじゃない!」
ほら、今年はチーズスフレにしてみたの!と姉さんが見せるのはうちの店の箱に入ったチーズスフレ。
「みっちゃん」
姉ちゃんは俺に顔を近づけた。俺とそっくりな顔。俺は女に生まれてたらこんな感じだったのかもしれない。(それでも俺の方がもうちょっと賢いが)
「お誕生日おめでとう。みっちゃんが夢を叶えることが出来て、お姉ちゃんはとっても嬉しいわ!」
これからもお姉ちゃんはみっちゃんといーちゃんを応援してるからね。
そう言って俺の額にキスをした。
「ぐっ」
「おい姉ちゃん、もう俺20超えてんだから、そういうのやめてくれよ!」
「え〜?照れ隠し?」
「ちがう!!!」
「よかったな、みっちゃん」
「みっちゃんって呼ぶなおっさん!!」
「皆にもしてあげようか〜?」
「ダメです許しません!!!」
姉ちゃんのさっきの言葉が嬉しかったのか感動したのか。少し賑やかな光景がぼやけて見えた。
20160303
Happy Birthday!
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