サファイア!どれが本当でどれが嘘なんだろう
その日から、テレビや新聞、週刊誌等のメディアでは大和のスキャンダルで持ちきりだった。
「(【idorish7リーダー二階堂大和、スタイリストと熱愛?!か…】)」
新聞から目を離し、テレビをつける。ワイドショーでは大和の話で盛り上がっている。
〈なんでも、二階堂さんはこのことを否定してるとか。〉
〈でも、お相手の女性はノーコメントを出しているんでしょう?〉
〈二階堂さんが一方的に隠したい感じがしますよねぇ。〉
「(このキャスター、たいして面白くもないくせに…)」
こういう時だけ粋がるんじゃないわよ。とテレビの画面に悪態をついた。
大和と距離を置いて、もう何週間かわからなくなった。その間は会ってもいないし、電話もラビチャもしていない。だって、そんなことしたらますます会いたくなっちゃうじゃない。大和もわかっているのか、大和からも電話やラビチャは来ない。それもそれで寂しかったり
するのだけれど。
「(…なんて、とんだ我儘よね。)」
大和は絶対にこんなことしない。そういう確信はもちろんあった。私が言うのもなんだけど、大和は自分のことを隠すのがうまい。だからもし浮気をしていたとしても、こんな、ドラマの共演者がうじゃうじゃいるような場所でイチャついたりしないだろう。それに。
「(相手のこの女、この前…。)」
そうだ、八乙女センパイに言い寄ってたんだ。しかも、メイク中だ。(寧ろスタイリストの彼女はメイク中でしか言い寄れないでしょうけど。)八乙女センパイの顔やら体やらべたべた触ってて楽が不機嫌だったって龍センパイ言ってたっけ。
「(…。)」
大和のことは信じている。それはもちろんのことなんだけれど、正直とても不安だった。こうでも冷静を保ってないと、泣いてしまいそう。スマホの画面には【二階堂大和 通話】と書いてある。今声なんて聞いたら、何を言ってしまうかわからないから。私はそっとスマホの電源を切った。
(自分のエゴであなたを拒絶することを許して。)
「(…やっぱり出ねえか。)」
スマホを放り投げてベッドに力なく倒れこんだ。何でもないような顔に見えて実はものすごく不安である。俺は今さっき、メンバーに問いただされてきたばっかりだ。
それは俺が社長に呼ばれて真実を話し、厳重注意を受けて部屋に戻ろうとしたとき。
【大和さん?!あんたなまえさんという人いながら…!!】
ミツを筆頭に皆が俺を囲うように寄ってきた。俺のその姿はさながら網漁に引っかかった魚だ。そして網たちは心なしか目が座ってる。これはまずい状況だ。
【…お前ら、耳にするの早いなぁ…】
【早いなぁじゃないでしょう!何を呑気に言ってるんですか。あなただけの問題じゃないんですよこれは!!】
【ヤマト…もうあのレディと関係は終わってしまったんデスカ?】
【おれ…おれ…っ大和さんとなまえさん、幸せになってほしかったのに…ぃっ!】
【陸くん、泣かないで…。大和さん、陸くん泣いちゃいましたよ。どうするんです!】
【え?え?リク?なんで泣いて…】
【っ…!!ヤマさんのバカヤロー!!!】
【タマ?!おいちょっと待て!】
【大和さん?今は俺たちと話してるだろ?なぁ?】
ミツとイチは完全におこだ。事情という名の真実を全員に話したものの、ミツとイチに説教をくらい(ミツは【なまえさんの気持ちを考えろ】イチは【そんなの今言ったってスキャンダルは変わらない】というものだった。)リクとタマは泣きだし、(2人とも【なまえさんがかわいそう】といって泣いていた。)そんな2人をナギとソウが慰めていた。(こいつらは時々こっちを睨んでいた。)
「(なまえ、いつの間にあいつらに慕われてんだ…??)」
今回ばかりは俺の失態か。自嘲するかのような笑いが出た。
電話は出ないし、ラビチャも反応がない。かと言って会いに行くのもリスクが高すぎる。それでも俺はなまえに会いに行かなきゃならない気がした。
「(今会いに行ったら、あいつは俺を受け入れてくれるだろうか。)」
時間は20時を回っていた。俺はジャケットを羽織って、渾身の脚力であいつの家に向かった。拒まれてもいい。ただ、あいつの顔が見たかった。
(俺のエゴで会いに行くことを許してくれ。)
20151115
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