わかったこと今日までで
朝。眠たい目をこすりながら私は事務所の長い廊下を歩いていた。連絡が来たのは昨日の夜だ。【今すぐ来い】と言われたのだが、作曲中だバカヤローいけるかハゲ……という言葉は飲みこんだが、急には無理だと告げたところ、こんな早朝に呼び出されたのだ。一体何だというのだろう。
「あっ、なまえちゃん!」
おはよう、と爽やかな挨拶をするのはエロ3人組の1人の十龍之介センパイだ。こんな朝早くにどうしたの?と毒気を抜くような顔で尋ねてくる。
「社長に呼び出されたんです。声色からしてお説教ですね。」
「えっ…。」
「多分曲についてでしょう。【なんだあの不抜けた歌はァ!】と。」
「そっ、そうだといいね…」
「え?」
「い、いや!何でもないんだ!」
じゃあ、頑張ってね!と、なにやら急いだ様子で去っていく龍センパイ。
「(なんだ…?)」
私は疑問を片隅に押しやりつつ、目の前の社長室の扉をノックした。
「(たっ、た、大変なことになったぞーー!!!)」
俺には今なまえちゃんが置かれている状況を2人に説明する義務があった。
「(しゃ、社長は既に…!!!)」
社長は既になまえちゃんが誰と交際しているのかを知っている。先程の彼女の証言でそう確信した。
「(早く2人に伝えないと…!!)」
俺はすれ違う人に見られていることもお構い無しに長い廊下を走った。目指すはTRIGGERのトレーニングルームだ。
(「た、大変だよ!」)
(扉を開けた先にいたのは)
(何食わぬ顔で腹筋をしていた天と楽だった。)
(「そんなことしてる場合じゃないよ!!」)
20151107
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