夜は長いな、声よ届いて
もう。あの男は本当に。これだから好きなのだ。


作曲で今回はどんな曲にしようか。私はそこで詰んでいた。今まで通りの路線に戻すか、また…まぁ、その、好きな人に宛てた曲にしようか。あの先輩方(エロ3人組。私はそう呼んでいる。)はきっと感づいているだろう。九条センパイの質問、龍センパイが寮の前にいたこと。見るからに怪しい。


「(…、あの人たちにばれても無害だとは思うけど…)」


黙ってるだろうな。あの三人なら。
あの三人のことを考えてたって仕方が無い。バレたもんは仕方ないのだ。はぁ、と短くため息をついて詩を書き始めることにした。答えは後者だ。大和とのこの関係を、歌にしたい。


大和との初エンカウントはミューフェスだ。それから何回か共演し、大和から好意を伝えてきたのだ。
正直、まさか大和が私のことを好きだなんて思ってもいなかった。片思いだと思っていた。そしてこの恋を心の奥にしまい込んでずっと友達の関係で行こうと思っていたのだ。そう思っていた頃だ、彼が想いを伝えてきたのは。


「なまえさん、好きだ。」


「…え、」



「…好きなんだ。」



顔を赤くした大和を見て夢なんじゃないかと思ったけど、夢なんかじゃない。そう思ったら泣いていた。涙でぐしゃぐしゃになりながら頷いたのを覚えている。(今となっては恥ずかしすぎる過去だ。)


「(なまえさん。かぁ。)」


いつから大和は私をなまえと呼ぶようになったんだろう。いつから私は大和に素直になってないだろうか。素直になりたいとは常々思ってはいるが、大和と面と向かってしまうともうダメなのだ。自分の意志の弱さにたまに自己嫌悪しかける。


「(でもきっと、大和も素直になれないこと、わかってるんだわ…。)」


いつもさりげなく気遣って。今回だって、ほら。先程もらったレジ袋には私の好きなアイス。そして一枚のメモ。



‘終わったらどこか遊びに行こうぜ。’


細くてしなやかな大和の字。この言葉が私に元気をくれる。こんな彼が大好きだ。




(新曲の作詞も早く終わった。)
(メロディーが頭をよぎる。)
(これが恋のパワーなのだ。)
(ただ大切にしたいだけなのに。)

20151107
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