ちょっと声を聞かせてください
あれから数日後。久々に見た大和の姿にまた泣きそうになった。

「俺の勝手でお前を傷つけた。ごめんな。」

「…。」

私はというと当分口聞いてやらないと、まだ意気地になっていた。またこうして会えたんだからいいじゃないか。そうは思ってもなかなか素直になることが出来ない。

「俺さ、余裕なかったんだ。」

まぁ、今も少しだけど。と苦笑しながら頼んだエスプレッソを口にする大和。

「…え?」

「ある事ない事ネットに書かれて、メンバーの空気も悪くなってさ。こういう時最年長としてのいつものスキル発揮できたら良かったんだけど。まぁ、何も出来なくて。収録中にもその後もゴタゴタが起きちまって…。」

なんつーか、なんとために歌ってたんだっけってなってさ。


そう言った大和は泣きそうな顔してた。

「新人賞とれたのはすげー嬉しかった。けど、素直に喜べなくてまたひと波乱だ。…笑えるだろ。」

「笑えないよ。」

「なまえ…。」

「それに、私と距離を置いた理由がわかんない。」

そう私がいえば、何故か大和は顔を赤くした。

「それは…その……なん、つーか」

「何よ。なんか言えない理由でもあるわけ。」

「いや、別にそんな訳じゃねーけどさ…情けないっつーか」

「そんなのいつものことじゃない」

「えぇ?なまえにはお兄さんいつも情けなく写ってるの?」

「いいから。私のラビチャをブロックした理由は?」

ブロックはしてないんだけどな…。大和はそう苦笑するが、笑う要素なんてない。私は拗ねているのだ。おこなのだ。

「なんつーか、お前に会うと八つ当たりしそうだったからさ。」

「は?」

「なまえはさ、強いよな。あんな厳しそうな社長のところで妥協せずにいい歌うたってる。何言われたって動じない心を持ってるよな。」

「動じないっていうか…適当に流してるだけよ。私だってやりたいことやらせてもらってるけど、仕事だもの。楽しいことばかりじゃないわ。」

「そうやって流せるのもなまえのいいところだよ。俺はお前が羨ましいんだ。なんつーか…だからだよ。お前が羨ましいから余計当たりそうだったんだ。」

初めて大和の本音を聞いた気がした。こんな風に自分が考えてることを話すような男ではなかったから。話してくれた安心と同時に謎の怒りがふつふつとこみ上げてきた。




※まだ続きます。



20151019

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