一人で泣かさないでください

夜。私は電気もつける気すら起きないくらい放心してた。理由はあいつだ。

【わり、しばらく一人の時間が欲しい。】

理由も書かれていないこのメッセージ。それから【どうして?】【私には言えないこと?】と立て続けにメッセージを入れても既読すらつかない。通知オフにしたな、あいつ。

泣きたくもないのに涙が止まらない。不安で不安でしょうがない。
できることなら今すぐ傍に言って、理由を問いただして、しょうもない理由だったらぶん殴ってやりたい。
そんなことを思う反面、傍にいてあげたい。悩みがあるなら聞いてあげたい。しょうもない理由でも抱きしめて、『大丈夫だよ』って言ってあげたい。
私の頭は相反する言葉でぐちゃぐちゃだ。

でもそれすらできない。彼はメンバーとの共同の寮で暮らしている。私は事務所の寮だ。会いに来れないし、会いに行けない。

というか、あいつはいつもそうなんだ。何か悩んでることがあったり、怒っていても、絶対に表面に出さない。『お兄さんが最年長だからねぇ。』そういって笑い飛ばす。何よ、同い年なんだからそんな肩書き私の前では必要ないのよ。でも彼はそう言う性分なのか、マイナスな部分は絶対に見せない。いつも自分の中で消化しようと躍起になっている。

この前だってそうだった。ドラマの撮影が終わった後一緒に外食した時、彼は眉間に皺をよせていた。

『どうしたのお兄さん。』と、眉間を親指でぐりっとしてやった。すると彼は『いんや、話すようなことでもねぇよ』と笑いながら額で親指を押し返したのだ。


「話すようなことだから、あんな顔してたんじゃないのよぉっ…!!」


他にもいくつかのことを思い出して、全部自分で消化しようとしていて、余計に泣けてきた。これはもう何を思い出しても泣くやつだ。

私に言えないことを背負っている大和に対しての寂しさも、怒りも、全部全部ぶちまけたい気分になってきた。



私は気が付いたら大和に電話をかけていた。


(出ないと寮まで押しかけてやる。)



20151018
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