ずっとそばにいてください
夜。ドラマの撮影が終わり、メンバーが待つ寮へと直帰する。最近なまえに会えていない。彼女は俺たちとは違い、自分で歌を作り、歌詞を考え、世間に発表している。彼女は今作曲中であるためなかなか逢いに行くタイミングが掴めないのだ。
「(…そう言えば、もうすぐで半年だな…。)」
そう、半年。もうあと数日経ったら俺となまえが付き合い始めて半年になる。色々なことがあったな、と一人で過去に思いをはせる。…とはいっても、一番鮮明に覚えてるのはなまえに「あんたは私の恋人だ」宣言された時である。あれは正直かなり嬉しかった。
大和の馬鹿ぁ!!!当分口聞いてやんないんだからぁ!!!
なんでいつもいつも自分だけで消化しようとするのよ。
なんで私にもそうやって言うの!私達の間にお兄さんだなんて肩書き要らないの!貴方は二階堂大和!私の恋人でしょ!
私を、あなた無しでは生きていけなくなるようにして。
あんた、自分でバカだから、風邪引かないって、言っていたってたのに!心配させて!許さないんだから!
…、はやく、治しなさいよね。
「(……あー、もう。ホントに好きだ。)」
いろんな彼女の顔を見てきた。やっぱりどんな顔よりもあの真っ赤な顔が好き。
「(笑顔も、かわいいんだよなぁ)」
その後の帰り道もなまえのことを考えながら寮まで帰った。
俺、本当にあいつのこと大好きなんだなぁ、と我ながら恥ずかしいセリフを心の中でつぶやいた。呟いてから何故か顔が赤くなった。まずい。寮にはあいつらがいる。こんな顔であいつらにあったら心配されるか茶化されるな。
寮の玄関を開けるとすぐリビングだ。リビングには見知った6人がテレビにくぎ付けになっている。扉の音に反応したタマがこちらを向いた。
「ヤマさん遅い。ヤマさんの彼女出てたよ。」
「た、環くん…!!」
「なに、だって彼女でしょ?」
先日の件でやっぱりそういう認識になっていた。間違いじゃないが、あの後散々質問されたことを思いだすと自然と苦笑いになる。
「みょうじさん、新曲出してましたよ。」
「そうそう!すごくPVも可愛かった!」
イチとリクも続く。そっか、見逃しちまったなぁ。と恥ずかしい気持ちをおさえながら笑って頭をかいた。するとナギがスマホを差し出した。
「そう思って動画サイト、探しました!Hitしました!」
迷わずチャンネル登録です!そう言いながら俺にPV動画を見せる。
「これ、絶対大和さんのこと思って歌詞書いてるよなぁ」
リア充め、と茶化すミツ。
「(ほんとにこれ、俺のことだな)」
今まであった事を守ってほしいことにしてるな。そう苦笑するとミツが「くっそー!なんか目の前でイチャイチャされてる気分だ!」と頭突きを食らわせてきた。そんなこともお構いなしに、久々に見た画面越しの彼女をますます愛しく思った。
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