be in low spirits
心が沈んでいくのを止められない。
その術が分らない…
剥がれ、落ちてく化けの皮を見てるのが怖かった……。
空に太陽は昇っても、俺の目からは涙が落ちて
風が吹いたら息を吸い込む。
なんだ…まるで、世界と俺は真逆に進む。
後ろ手に隠したこの剃刀は何も切れない。
約束は破るもの。
嘘は信じるもの。
偽りに支配された胸の中はいつまで経っても陽気そのもの。
「おい、聞いてる?仁王」
「……さあ」
「なんだよ それ」
「って言うか、今授業中じゃろ?」
「…まあな」
偽り続けて時間が経って、嘘をつくのはうまくなった。
ヒラリ、ヒラリと川の中を泳ぐ まるで蝶。
「そう言えば丸井、お前最近恋人が出来たんじゃろ?」
「ん?ああ、そうだけど…」
「しかも男なんじゃろ?その恋人」
「やけに詳しいじゃんよ」
にやり、笑ってみる。特に意味はない。
ただ黒板に無造作に書かれた文字を見てるのにあきただけ。
「ほんとわからねぇ、仁王って」
お腹が痛かった。
「腹とケツが痛いのう…」
放課後は決まって、誰でもいいから毎日ほかの男に抱かれた。
尻の小さかった、今は拡張された穴に棒が入るのがたまらなく面白いから。
それでも足りない時は、都心の駅の前に立って、声がかかるのをひたすら待ってた。
「今日で2か月だね…仁王が部活に来ないようになったの」
「幸村くん数えてたんだ?気になってんの?仁王のこと。」
「前から部活だけはわりと来てたのに急に来なくなるから…」
「よくね?アイツ外で色々やってるらしいぜ?」
「…色々って?」
「よくわかんんねえけど…売春とか?」
「知ってるなら止めなよ…」
たまには顔を出そうと覗いた矢先、変な会話を盗み聞き。
「別に好きでやってんだからよくね?」
「……ブン太が付き合い出した頃から…だよね」
「………」
「……」
「え…それって、どういう…?」
「別にどういう訳でもないじゃろ」
二人の会話を割って入ったのは、もうこれ以上は気付きたくなかったから。
もうこんな気持ちを持続するのに疲れていたから。
「…ただ、初めての相手がお前だっただけじゃろ、丸井」
それ以上は知らない。
ただ一回だけの関係だった。
今はそう何も考えたくないだけ。
「仁王、お前…なんで部活来ないんだよ」
「面倒くさいから」
「じゃあ部活なんかやめちまえばいいだろぃ」
「……」
俺が下を向いて沈黙を続ければ、そこに流れるのは
はりきった様に重たい空気
だった。
「あ…ごめ、仁王…」
「? 何を謝っているんじゃ…」
「だって俺…」
「“可哀想”か?」
きっと
こんな時だってヘラヘラ笑ってる俺を見て、
お前は、
不思議に思ってる。
「不謹慎だったかのう?お前が責任を感じて謝ってる時に笑ってるのは」
それだったら…気の済むまで
“偽者の涙”を流してやろうか…?
「仁王…泣くなよ…」
声も、出さずに
表情も変えずに
ただただ泣いた
次第に涙が止まらなくなって…“これは本物?”“実は偽物?”
嘘に惑わされているのは
“一体誰?”
わかんなくなった。
俺が一番、俺のイリュージョンに欺かれている…。
本当は、自分が嫌いで嘘を付いて自分を誤魔化してるだけ
わかってた。
もう随分と昔から。
カツラを被っても、誰かの声を真似してみても、どんな服をきて、どんな仮面を被っていても
自分は、自分でしかいられないってこと。
性格や自分を変えるのは簡単
難しいのは、“周りが変わってくれるのを待つ事”
でもない。
本当は、
“それを持続していく事”
太陽も、月も、俺たちの住む国でその光を持続することなんかできてない。
一日も休まず進んでく時計の針だって おんなじ場所にとどまる事ができない。
そして この想いも、輝きをずっと持ち続ける事なんかできやしない。
だったら…何もないままでいいから、このままお別れ。
そっちの方が楽ならば、そうするしかないんならば
それでもいい
「…仁王、もしかして 俺に惚れてた?」
「だったらなんじゃ」
「いや…」
…何度も、何度も。
自らの意思で自分の体を汚しまくった。
金が欲しかった訳じゃない
ただただ、悲しかっただけ。
そんなの、今更言ったってただの言い訳かも知れない。
ただ、抱かれて貰った金でお菓子を買って、それをあげたらお前が喜んだ。
それだけの事。
だから俺は繰り返したのかもわからない。
他の誰でもなくて、お前にうんと愛して欲しかったから。
「好きだった。ずっと。」
見つめてた。
愛してたのに。
「だけどお前は、あっけなく他の子を愛した…」
日が沈めば月が昇る。
お前の心が上がれば俺が沈んだ。
順番に世界は廻るから、頭の回転が遅くて追いつかなかった。
追いつかないなら、追いかける事もなかった。
俺は俺のままで、それなりの幸せを求めて、そして、生きる。
『幸せってそんなに大事な物かのう…』
何かしらの本を読んだ時に考えて見た。
世界を、全てを。
今になって解った。
その答えが、大事だと言うこと。
どう生きたってどうせ死んでしまう人生なら、どうせなら笑って生きて行きたいから
「だから…俺の本当の気持ち。お前のことがたまらなく好きでした…」
「……仁王、どうせ…それも嘘なんだろぃ?」
「………」
そう、いまさら遅い。
他人に、自分に、嘯いて出来た物
それは
「フ…」
深い深い偽りの森の中で光も出口もそこにはなくて
「やっぱり騙されなかったか、お前も案外利口じゃのう丸井」
どんなに叫んでも助けの来ない
「俺がお前に堕ちるわけないからのう」
“本当”を誰もが疑う闇の世界。
気分が泣いて、顔が笑う
言葉と裏腹に心が痛い
なんでだろう?いつからだろう?
狼は一人で生き行く事を誓う…。
(2011/4/4)
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