雪の降る夜

木枯らしが吹く寒い夜、隣に君がいる。
それだけで俺は嬉しくなる。
ねえ、この幸せなひと時がずっと続けばいいな…なんてそんな事を考える。

「今日は寒いね…。」
「そうだな。」
「おいで。」

俺の胸に。
寒いのなら、温めてあげるからそばにいて。
きっと俺たちうまくやっていけるから。

「年下の子に言われるとなんか恥ずかしいな…」

そんな事気にする人じゃないと勝手に思っていたから、言葉にされた事でこちらもはにかむ。

「…もっと甘えてよ」
「ああ…」

赤くなる頬。
誰のせい?
それは俺のせい。

「大好きだよ…。本当に愛してる」
「俺もだよ。幸村」

君が嫌いなこの寒い季節、俺はホントは大好きなんだ。
だって君と寄り添えるから。

そんな事を君に打ち明けたら君はなんて言うかな。

「今日はもう眠ろう。」
「うん、おやすみなさい。徳川さん」

夜がもっと永かったらもっとずっと君と話すことができてたね。
だけど眠くなるのも早い俺はどうせ無駄にするね。
そう。きっと、いつもみたいに君の可愛い寝顔も見れずに夢の中。

おやすみなさい。

瞳を閉じればすぐにやってくるのは優しい夢。
君と同じ空間にいる夢。
だから俺は目を閉じる。






真っ白い朝が来る。
全てを隠す優しい朝。
君の寝顔を見れる唯一の時間のはずが君は今日に限って早起きで、俺はアッサリ日課を逃す。

「おはよう。」
「おはようございます」

寝癖のついたままの髪の毛が今の俺はとても嫌。
ねえ、こんなだらしない所を見て何を思う?

それでも時間は止まらなくて、俺は彼より先に一人暮らしの彼の家から出る。

「行ってらっしゃい」
「……」

こんな台詞を毎日聞きたい
10年?
そのくらい時が経ったときも同じ気持ちで君の事を見つめられていたら…。
きっとそれ以上の幸せは無いのだろう。

道を歩いていたら綺麗な花は咲いていた。こんなに寒いのに、凛としていて美しい。
俺達の未来がこれからあってもなくても今、二人で歩けたらいいね。

部活に疲れて家に帰って、ため息をついた瞬間に偶然に君が電話をくれる。

『今日、これから逢いたい…』
「わかった」

俺は当たり前の様に承知する。

「ちょっと出掛ける。」

なんて。言い慣れたセリフ。
そう。いつだって君に逢いたいのは俺の方。
どんな日だって、君に逢えば心は浮かれる。
きっと運命。

走って過ぎる景色。
俺はもうすっかり見慣れたよ

氷の溶けてしまった薄いドリンクみたいな関係ならいらない。
愛だけがこの胸に充満してる。
この心は光。真っ白い光。
これ以上明るい世界なんかもうないのさ。

君の家の前、いつもの様にチャイムを押す。

『…幸村?』

インターホンから聞こえる声もいつもと同じ。
ほんとに小さい事の一つ一つが嬉しくて仕方がない。

「うん」

すぐに玄関のドアが開いて俺を中に入れる。
相変わらずの部屋。
玄関を少し入った所にあるカラーボックスには俺の寝巻き。

ソファーには水色の四角いクッション。

そしてベッドにはお揃いの枕…。

「風呂は入ったのか?」
「え?まだ…。」
「………。」

突然黙る。紅くなる頬。
この俺を少しじらして開く口、

「…一緒に、入る?」

そんな可愛い君に意地悪して拒んでやろうかと、一瞬よぎってすぐ返事をする。

「いいの?」
「ああ…」

ほんとに可愛い。俺はほんとに君を大好きで…もうどうにかなってしまいそう。















そして、2人温かい湯船に浸かった後はベッドの中。

ふと夜中目が覚めて冷めた体をこすってみたり。

「寒いのか?」
「……」
「エアコンつけるか?」
「いい」
「そうか。」

目ぼけていた為断って、だけど寒いのは変わらなくて少しだけ後悔する。

「やっぱり寒いんだろう?」
「…あ、え?」
「おいで」

すぐ隣にいる。
もっと近づけと言わんばかりに布団を持ち上げて俺をよんだ。
俺は素直に近くに寄った。
温かい。

「たまには俺にもリードさせろ。大体、俺の方が年上だ。」
「…わかった」

蝋燭に、明かりを灯して温める様に そのスピードはゆっくりだけど体は徐々に温まる。

そのまま眠りに就いて朝が来るまで 疲れた体を休ませる。
窓の外で聞こえるのは小さい雨音。
その音がだんだんなくなって、パラパラと音が聞こえる。

「雪…?」
「…降ってるか?」
「わからない。…ちょっと見に行ってみようよ」

俺は徳川さんの返事も待たずに外へ飛び出した。

「徳川さん!!雪降ってるよ!!」
「……そうだな。」
「明日まで降ってるかな…」
「…寒くないのか?」
「寒いけど…」

三月の終わり。
今年の雪はこれで終わりなんだろう…。
そんな季節外れの雪を見ながら呟いた

「温かい…」

桜の花はつぼみを持って、もう少しで花が咲いて。
木蓮が次の冬まで眠りに就く。

「幸村、もう寝よう」
「うん」

部屋に入れば冷たい風は当たらない。
代わりにあるのはいつもの君の掌と、俺の好きな笑顔。

「徳川さん」
「どうした?」

振り向いた君に、大きな声で伝える

「…大好きだよ!」

俺の視界に見えるもの。
はにかみながら髪を整える、紅くなって微笑む君のいつもの顔。


(2011/03/28)















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