この心、君を願う

あなたは見てるかな、この続く空の彼方を


















「鬼さん、明後日は流星群が見えるらしいですよ」
「流星群…か」

そう言って空を見上げたあなたの顔
男らしくて そして 綺麗だった。

「夜、一緒に見ませんか?」

軽いノリ、それは自分の為の予防策。

「ああ」

だけれど、あなたの返事はいつも優しい。
優し過ぎて時々、俺に気があるのかとか…そんな事を勝手に妄想して現実との差に寂しくなったりする。

「じゃあ明後日の夜…迎えに行きます。」

ねぇ…手を繋ぎだいよ…。
そして深く抱き合いたい
胸の中にあなたを埋めたい。
名前をそっと呼んでみたい……

本当、愛してるって実感する。
同じようにあなたも思っててくれれば嬉しいんだけど、いつもそんな上手くは行かないんだけど…。










夜になって空の色が変わって、俺はコートも着ずに外へ出た。

人並みに流されて行くのが嫌だった。
だからわざと遠回りしながら流れに逆らい歩いてく。どうせ遅れたとしても誰も構わない。
俺は一人。

この角を曲がったらあなたの家。
もう布団に入っているだろうか…

そんなことを思いながら角を曲がった。
やっぱり、あなたはいない。

「はぁ…」

なんて溜め息。
期待してたのかな…。
そんなショックを受けるうちはまだあなたを好きな証
だから泣きたくても泣かない。

俺は一人、星がよく見える河原へ歩いた。
トボトボと、歩くスピードは遅く重く寂しい。

河原へ向かう道の途中に空を見て、綺麗な星をあなたに例えてみたりもする。

隣に並んで歩くあなたを一人で想像してみた。
足取りは重いまま、気持ちだけ軽くなる。

風が冷たい。冷めた指先。

それでいいよ。
最初から上手く行く恋なんて有り得ない。
間違いはどこにもない。



河原に着いて人影を見た。
その人は空を見ている。

「……あの、隣いいですか?」
「…はい」

暗くて顔は見えないけど、鼻をすする音で分かった。
泣いてるんだな って。

「綺麗ですね、今日の星は。」
「…ええ。」

寂しかった。
誰かといたかった。
だから心が落ち着いた。


この人もそうなんだろうか。
だったらそれも心地良い。

他人と二人で星に泣く。
あと少しすれば俺の待つ青い季節。
それまで焦らないで自分でいればいい。

ねぇ、鬼さん。
俺の事をあなたはどう思ってますか?

もしかしたら何も思ってないかも知れない。
届かない方が燃える訳でもない。
けど、あなたに届いて欲しい。
俺はあなたに、愛されたい。












「徳川…?」

空を見ていてしばらく経った時、その声はした。

「…お、鬼さん!?」
「ごめん待ったか…?」
「いえ…来て、くれたんですね…?」
「ああ…。」

さり気なく差し出した手に彼の手が重なった。
鬼さんの手、冷たい。

「寒かった…ですよね…」
「ああ…大丈夫。」

少し笑ったあなたの顔。
綺麗。

好きで好きで好きでたまらない。
俺の知らないあなたを見たい。
もっと知りたい。






「ずっと待ってた。お前が来てくれるのを。」「え…?」
「いや…忘れてたよな…一昨日の事なんか…。」

鬼さんが、俺を待ってた…?
ずっと…一人で…?

「すいません…俺――」
「気にするな」

優しい顔。
好きだなぁ…その顔が。

「鬼さん…その、俺…













あなたの事が、好きです。」









時が止まった。
自分でも何故言ったのか分からない。

だって叶う見込みがないのに、こんなの…切ない








「知ってる…。」

やっぱりあなたは笑顔を見せた。
薄い笑顔。
それを剥いだらすぐに悲しい顔が出てきそう。

「すいません…」
「なんで謝るんだよ…」
「…だって」

「なぁ徳川?なんでお前は、俺の気持ちを聞いてくれない?」
「え?」
「…俺だって、お前の事――――」




――好き、なのに…。





もしその言葉が本当ならば、俺はなんだって出来る。

「……本当、ですか?」
「…ああ」
「俺でいいんですか?」
「…お前だからいいんだよ」

泣きながらあなたを見つめる。
本当はこんな情けない顔見せたくなかった。
だけど…俺は見たかった。

俺はいつもいつもあなたを思う。
この心はいつでも、あなたの事だけ願ってる。




(2011/02/16)
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