真実として存在する、今日の僕。

蝶が舞ってる夢を見た。ひらひらと僕の目の前を横切るモンシロチョウ2匹が己の運命に引かれるようにある1点を目指して彷徨っているように思える舞い方だった。その情景は幻想的でとても綺麗だった。

あまりに綺麗な夢をみると現実との境目がわからなくなる、らしい。
目覚めた僕の身体は夢の中の自身と違い、怠い、ただ怠かった。昨日あったことが断片的にしか蘇らず、鮮明な今の自分のほうが蝶の夢なんじゃないかと思えてきて、現実と夢のギャップに吐き気がする。
ややあってもそもそとベッドから起き上がると、右手で長い前髪を軽く整えた。そしてその右手を朝日にかざし眺める。
昨日、死へと向かう暴走モノレールをこの手でブレーキを捻り止めた。嘘だと思うが本当に直感だった。電車の操作なんて見よう見真似で出来るもんじゃないのに、何故か僕の身体はブレーキへと向かっていた。目の前に一本前のモノレールが迫っていた。運が悪ければあと数秒で僕たちは衝突事故で木っ端微塵に吹き飛んでいただろう。ゆかりの悲鳴が未だに耳に残響している。
僕がブレーキで一命を取り留めた一部始終を見ていた順平が、僕に対して不服な色を目に浮かべていた。仕方ない、いいとこ取りをしてしまう理由が知りたいのは僕だって同じだ。

「おはよ、昨日は疲れたね。ブレーキ本当にありがとう」
寮の玄関先でゆかりが疲れているのに無理矢理笑って片手をひらひらと振っていた。
外が影時間と違って眩しい。
「……、ねむい」
僕は大きな欠伸をすると、ゆかりは顔色を伺うように覗いて苦笑いをした。キミっていつも寝てるよね、そんなに寝ると現実との境目が解らなくなるよ。
ああその通りだ。現に今が蝶の夢なのか夢の蝶が現実なのかわからない。僕は目を細めた。
「胡蝶の夢、ねえ」

なんでもいいから僕を平穏に寝かせ
てくれ。




真実として存在する、今日の僕。







131129
映画見てきたので過去に書いた文章を改訂。
改定前








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