6時から斜め45度までのアドロ


次の満月、ブラッドとかいうフェンリルトップクラスである新世代エリート精鋭部隊の隊長がクレイドルに転属してくるという噂を聞き、私達中堅ゴッドイーターが肩身の狭い思いをするようになるのではないかと、遠征先の欧州で日々戦々恐々としている。

「奴の靴に閃光弾を仕込んでビビらせ、先輩としての威厳を保ちたい」
仮にもクレイドル遊撃部隊の中尉でもある、顔面ピアスだらけの男、エディがとんでもなくしょうもないことをぽつりこぼした。
声色によっては冗談と笑い飛ばせることでも、彼は本当にやりかねない。実際ふざけたような声を上げたくせに二度見してしまうほど真剣な顔つきをしている。
「クレイドル皆の人格が問われるからやめてね」
そう言ったところでやらないとは限らないのが怖い。ブラッドよりもエディの方が怖い。正直なところ、顔面ピアスだらけな男と万年水着な女が中尉な時点でクレイドル自体もどうかと思っている。
エディはそんな私の説得力皆無な返答に、聞いているのか聞いていないのか、どこに置いているのか分からない視線はそのままに、ただ足を組み替えただけだった。

2人を運ぶヘリコプターが上昇を始め、バラバラと騒音が一段と大きくなった。目下には見慣れた廃墟が散らばっている。
極東支部はどの辺だったかなと思い馳せれば、6時の方向に深緑の上弦の月が浮かんでいた。満月まで、あと1週間といったところか。


ブラッドが無所属の、クレイドル遊撃部隊がフェンリル最強でいられるのもそう長くない。
神機の性能は使用者の身体能力に比例しないといっても、肝心の身体には怪我や老いなどでいずれガタが来てしまう。そんな有限な人間にお構いなくアラガミは無限に進化している。だから、新しい神機を扱える若いゴッドイーターを常に優先して確保していかなければ戦い抜けないのに、クレイドルは最前線の遊撃部隊ということで配属される新人は皆無だ。
かつてもてはやされた銃形態と剣形態に切換可能な神機を使用する私達2世代目のゴッドイーターも既に当たり前になってきていて、ここ最近は噂のブラッド、所謂第3世代が頭角を現しつつある。
旧世代の神機から第2世代に切り替える技術も流行り始めたのだが、やはり適合試験に激痛が伴うことや、まだ安定した技術ではないこと、適合者が希少ということが祟って乗り換える人間は稀だ。また、適合していても使い慣れた旧式のままで良いという頑固な人間もいる。
コウタもその1人で、そういった理由で未だに遠距離神機を使用しているにかかわらず、指揮能力と戦況を見極める能力が評価されクレイドルで第1部隊長になった。エディと私が長期の欧州遠征に行っている間だけの臨時的な立場なのだが、コウタのほうが私達2人よりよっぽど隊長に向いている気がする。


エディが本気で泣き喚くからコウタの話題を出さないようにしていたのだけど、ヘリコプターの騒音で会話が続けられない時などに彼を眺めれば、やはり同じく極東やクレイドルの皆について考えているような仕草が窺える。もしかしたら本当に上の空なのかもしれないが。
月を眺めるエディの、脱色に脱色を重ねた毛先が月光に透けて煌めいたように揺れている。
空いた窓から流れる欧州の風は、アラガミの所為で荒む極東の風より少しだけ穏やかだ。

「目的地まで残り1キロ、降下体制に移行します。アメノ中尉、エディ中尉、ご武運を」
「よっしゃ今回も生きて帰るぞー」
「あと逃げてもいーけど、生きることからは逃げないよーに」
ヘリポートの目下にはキュウビが2人を見据えていた。それを睨み返しながらツナミビキニのリボンを整える。
左上斜め45度の月が無事を祈るように瞬いた気がした。





6時から斜め45度までのアドロ
(そういえばもうブラッドの人は事前にソーマとサシで任務をこなしてるらしいよ)
(よし極東戻ったら靴に閃光弾仕込むぞエディ)























神喰3へ期待と愛を込めて
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