「雨だ」

起床してすぐまさかと思ったが、そのまさかだった。
天気予報はここのところ嘘つきだ。昨日は雨の予報だったのにかんかん照りなど、今日のザザ降りといいあべこべもいいところである。
「雨だー……」
いつもより低く重い声色ではっきりと目が覚めた僕は、声の主である隣のxxくんの顔をこっそりちらりと見てみた。今にも泣きそう、というかもう既に泣いている。
「せっかく誕生日にxxxさんからディズニーのペアチケットプレゼントしてもらったのに……そんで今日しかお互いにオフが被ってないからって、」
思い通りに事が進まなく、駄々をこね仕舞いには泣いてしまう子供のように、めそめそし始めたxxくんを少し不憫に思った。うつ伏せになっているけど小刻みに震えている肩を見る限りでは本気で泣いているようだ。
xxくんが泣いても僕が不服に思っても、外の滝のような雨は一向に止む気配はない。ついには雷まで鳴り始めてしまった。天気なんだから空気ぐらい読んでくれたって良いのになあ。
「順延ですね」
ゆっくり息を吐いて、なるべく残念そうな口調になるようにxxくんへ言葉を渡した。
その僕の言葉が気に入らなかったのか、ものすごく眉間に皺を刻んでこちらを見てくる。目が赤い。
別に二人の仲が終わるわけでも世界がどうしようもない終焉に向かっているわけでもないし、チケットの期限が切れても奢りで連れてくのにとか台詞はいくらでも思いついたけど、この視線が絡んだ状態だとすぐには気の利いた台詞は見つからず当惑してしまう。
本当に残念そうなxxくんの顔を見据えて口を開く。
「駅前の喫茶店でも、行く?」
xxくんは目を細めて、そうですね、と笑った。

先延ばしのお楽しみ
16.09




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