なんなのと言われても

一緒に帰っていた真緒くんが生徒会の急用で呼び出され、真緒くんが連れていた朔間くんと自動的に二人きりで取り残されてしまった。
明らかにかんかん照りの今日は、一歩でも外に出たら蒸発してしまいそうな天気で、近視でもわかるほど渦巻く陽炎にうんざりするぐらいの真夏日である。遠くの方でジリジリと長々と嫌味ったらしく鳴く蝉が更に体感の暑さを加速させている。
私の差す日傘の影にちゃっかり入ってる左後ろの朔間くんをちらと見た。まだ彼にとって得体の知れない人間である私と一緒に帰るより、幼馴染でよく知る真緒くんを追って朔間くんも学校に引き返すかと思ったけど、この暑さのせいか薄目だし口は半開きで真緒くんどころではなさそうだった。

「どっかで涼でもとる?真緒くん待つ?帰る?」
「いっぺんに何個も質問しないでよ、めんどくさ。別にまーくん気にしないでこのまま帰ってもいいけど、今日木曜日で絶対家に兄者がいる……。鉢合わせてアンタといたことをネタにしてきてしつこそーだし、今帰った方がきっとめんどくさいことになりそうだから待つことにしようかな」
「それ結局家に帰る計画だし嫌なこと後回しにしてるだけ……まあいいか、一応真緒くんに伝えとくね」

そうして真緒くんに用事が終わるまで避暑して待ってる旨を連絡してから、降り注ぐ日光をなるべく避けて辿り着いたファミレスで席について注文して頼んだ物が来てと、一連の流れを一通り終えて気付いた。

この二人きりは大変気不味い。

二人の間のクリームソーダとコーラフロートが気不味そうにシュワシュワと音を立てて汗を流している先、目の前には退屈そうに頬杖をつき、ファミレスの窓の外で行き交う人々を眺める朔間くんがいる。寝癖のせいで無造作に見える柔らかそうな黒髪をそんなことも気にも止めずに掻いて、欠伸をしたのか赤い目が微かに潤んでいた。

二ヶ月程前の事件、双子くんに導かれてなぜか朔間くんのお兄さんにゆるい説教を食らったことが未だ鮮明だ。全てを知ってるような雰囲気なのに、綺麗だけど核心を突かない曖昧な助言しかくれない朔間先輩は、登場人物たちが困っているのに助けてくれない助けられない物語の作者みたいでどことなく好きになれなかった。
あれから校内で出会うことはないが、訳の分からない期待をかけられている以上、絶対にどこからか監視しているに決まっている。
とにかくその何を考えているのかわからない先輩の弟となると、自分が無意識に警戒してしまうのも仕方がない。

「あのさぁ、」
ふいに咲間くんと視線が絡まって赤い月のような目の色に落ちていきそうになった。目が合ったことをごまかすように慌ててコーラフロートを口にすると、それに習って彼もクリームソーダを啜る。
話しかけるのは何回かあったが、話しかけられるのは初めてだ。
ややあって欠伸のついでとばかりにのんびりと口を開く咲間くん。何を言われても動じないよう身構える私。
「アンタ、まーくんのなんなの?」


なんなのといわれても

























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リゼ