君の星とカーテンコール

目が覚めた。
クロの異常なまで久々な威嚇の声で起こされたらしい。当人はちらりとこちらを向くと、ベランダのガラス戸を爪で掻ききいきいと嫌な音を立てた。開けろ、ということか。僕はぼさぼさな髪のまま、ゆっくりとベランダに向かった。
僕の手に導かれカラカラと開いたガラス戸。クロが警戒するように耳をぴんと立てる。
朝日がまだ完全に昇っていない微睡む朱の中、ベランダに一人の女性が横たわっていた。顔はあちら側で伺えない。透き通るようなボブの金髪が、空の朱を受けてオレンジ色にさらさらと揺れていた。きれい、だと思った。
「あの、どなたですか」
僕は警戒するクロを抱きかかえると、微動だにしない金髪に呼び掛けるように肩に話す。にゃあ、とクロが鳴いた。

朝日が先程より高く昇って漸く蒼が映える空になってきた。ややあって風が小さく吹き、ゆっくり上体を起こした彼女の、目深に切り揃えられた前髪が揺れて黒目がちな双眸が僕を捕らえた。
「上の階の人?」
僕が自分で指差した上を見てみると、上の階はなかった。そういえばここの部屋最上階だった。じゃあこの人は何処から落ちたのか。
「ここ何処ですか」
質問を質問で返すという気分を悪くするような所業をした彼女は、ああハレー彗星と思い出したように声を上げる。もともとが掠れてるのか、気が動転しているのか、ハスキーな声だった。
「そうだ彗星、わたしハレー彗星からきたんだ」























to be continued


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リゼ