さよならのそのあと

気が付けばまた暗闇だった。
自分と空気の見分けもつかないほどの暗闇で、僕は側にいるであろう双子の妹に声をかけた。
「みんな元気かな」
毎日そればっかりだ。正直他に考えることがなくてうんざりしている。
「荒垣先輩ちゃんと息してるかな」
彼女の返事はいつも決まってそう、僕たちが現象と化しても荒垣先輩のことばっかり心配している。他に心配すべき人間は山ほどいるのに1人の人間の名しか挙げない理由はただひとつ、知ることが出来ないから。彼女なりの他人への心配のごまかし方だ。
僕らはあまりに大勢の人間と関わってしまった。死ぬのが躊躇われるほど、何人も何人も。
「どうにかして先輩の日常を知りたいけど、どれもこれもうまくいかなくてもう案さえ浮かばない」
根暗な僕と本当に血が繋がっているのかと疑うほどの脳天気な妹である。でも言葉とは裏腹に声はいつもより少し掠れていたのでやっぱり寂しいんだなって思った。僕だってそうだ。置いてきた人が数え切れないほどいる。
「でもさあ」
喋るのが好きな妹がさっきより幾分声のトーンを落とし、息を長く長く吐いた。
「兄貴もこの結末一緒でよかったと思ったよ」
それは僕も終末を迎えてからずっとずっと思ってる、そう口には出さず代わりになにも見えない暗闇へと手をゆっくりと伸ばした。





さよならのそのあと

(1人だったらこんな余計な感情は芽生えなかったんだろうなあ)



































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