※高校時代/ほぼ会話。


「……お?」
「……あ」
「そんな所で突っ立ってどうしたのだ、蒼命?」
「いや、その……別に……」
「まさか、靴が無いのか?」
「いや、あるよ、ほら」
「おお、そうか……」
「………」
「……この後、何かあるのか?」
「……特に、無いけど」
「……そうか」
「………」
「……では、久し振りに、帰るか?」
「……ん……」
「………」
「………」
「………」
「……あ……」
「む?」
「……あり、が……」
「あり?」
「……ほら、其処」
「お、ああ……蟻、だのう」
「………」
「……突然どうした?」
「……別に」
「?」
「………」
「………」
「……数学」
「ん?」
「だから……今日の、数学の授業」
「数学が、どうかしたか?」
「……ノート」
「おお、そうだ!おぬしには感謝せねばのう。落としたノートを拾ってもらって――」
「……私が予習しそこねた問題の解き方が、しっかり書かれたノートをね」
「!」
「休み時間、蝉玉に言われて予習範囲がずれていたのに気付いたから、当てられた時は本当に焦った」
「………」
「……だから、解き方を見せてもらえて、助かった」
「……別に、まぁ、暇潰しに解いただけだが」
「………」
「………」
「……あり……」
「……また、蟻がどうしたのだ?」
「……あり、がとう、太公望」
「――…」
「………」
「……うむ」
「………」
「………」
「……今度は、さ」
「む?」
「教えて欲しい、かな……その、直接」
「――…!」
「………」
「……うむ、では、相当気合いを入れねばのう!おぬしの数学オンチっぷりは中学の時から進化しておるからな!」
「わ、私が数学オンチ!!?」
「いや、この場合は退化と言うべきかのう?」
「な――っ分かった、今度授業中寝ていても、絶対に起こさないから!」
「なぁ――!!?」
「寧ろ寝ているのが目立つ様にするからね!!」
「な、何でそんな事されねばならぬ!!!」
「人の事を馬鹿にした罰!!!」
「っ待て待て蒼命!!そう早足になるなっつーに!!!」
「早く帰って明日の予習するの!」
「むー……二人で帰る時間が、減るではないか……」
「ん、何か言った?」
「……別に」
「………」
「………」
「……そういえば、明日も数学あるんだよね」
「うむ、そうだのう」
「……早速、教えてもらおうかな」
「……へ?」
「……この後、大丈夫?」
「っ……うむ」
「……じゃあ、私の家で」
「……うむ」
「………」
「………」

さっきは片言になってしまったから、また後で、ちゃんと言おう。

いつも憎まれ口を叩いてくる、けれど本当は、誰よりも優しい幼馴染みに。
いつも憎まれ口を叩いている、けれど今日ばかりは、少しでも素直になって。


「――…ありがとう、太公望!」

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リゼ