遠くの星に憧れ、その輝きばかり追っていた。だってあんなに綺麗に煌めいて、地上の私達を魅了するんだもの。


だから、ずっとずっと星を追った。この地にいる以上、追っても追っても追い付けない事は分かっていても、追いたい気持ちは収まらず、天体図を手に星の輝きを探しては、大地を走り回っていた。

そんな空を指差し走る私の隣には、いつも貴方がいた。星への憧れしか語らない私を、黙って笑って見守っていた。

そうして上ばかり見ていたら、ある時足元の石ころに躓き転んでしまった。そうしたら、すぐに貴方の手が視界に入り込んだ。


その手を見て、貴方の笑顔を見つめて、やっと、気付いた。


夜に手元の天体図が見えたのは、貴方がそっと光を差し出してくれたから。
夜に星を追っても怖くなかったのは、貴方がずっと傍にいてくれたから。


何で遠くの星ばかり追っていたんだろう。満天の星達を集めても敵わない輝きを、私はいつもすぐ隣に持っていたのに。


「……普賢様」
「ん、何、白夢?」
「……やっぱり、普賢様は普賢様ですね」
「……急にどうしたの?」
「いえ、何でもありません」


ほら。私がよく分からない事を言っても心配して下さって、けれど私が笑っていたら安心した風に笑みを見せて下さって。



今の私にとって、貴方の笑顔こそ、一番大好きな星なんです。

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