「……あーたには、似合わないさね」
「あ、失礼だなぁ。じゃあ、はい」
「な、何さその手は?」
「それ、持って帰るから返して」
「そ、それはダメさ!これはもう俺っちのモン!!」
「失礼な事言う人にはあげませんー」
「いーや、もう貰ったモンだから、これをどうするかは俺っちが決める!!」
「ふーん……」
「……そう睨むなさ白夢。可愛い顔が台無しさ?」
「そんなクサい言葉、貴方には似合わないよ」
「……ん、んな事、言われなくても分かってるさ。あーたもあーたで失礼さね」
「………」
「………」
「………」
「……でも、さ」
「ん?」
「あ、あーたが可愛いとは、いつも、思ってるけど……」
「!」
「………」
「………」
「……な、何か反応とか――」
「天化」
「な、何さ?」
「……出逢ってくれて、ありがとう」
「!」
「………」
「………」
「……ほら、貴方もちゃんと反応して」
「……あーたには、似合わないさね」
「……だよね」
「けど……嬉しいさ」
「え?」
「白夢も、俺っちと同じ事、思ってたんだなって」
「!」
「……出逢ってくれてありがとうさ、白夢」
「――…」
「………」
「………」
「……これ、いただくさね」
「ん、どーぞ」
「ちゃんと味見した?」
「ちゃーんとしましたから、安心して召し上がって下さいませ」
「んじゃ、遠慮無く」

横一文字の傷が付く鼻を照れくさそうに掻いてから、彼が白い歯でカリッと挟んだ、甘い甘いハート型のチョコレート。

「……あーたみたいなへそ曲がりな人には、俺っちみたいな物好きしか似合わないと思うんさ、白夢」
「……私も、貴方みたいな何でもかんでも一直線な人には、私のような世話好きしか似合わないと思うよ、天化」

そうぼやくように言って、失礼だ、とお互いに睨み合って、そして肩を揺らして笑い合う二人の上には、青い青い天界の空。


きっと明日も笑い合いながら一緒に見上げる、広い広い二人だけの青空。


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リゼ