青空にぽっかり浮かぶ白い雲を見遣り、天界の空も綺麗だなぁとぼんやり思ってから、一言。

「……最近どう?」
「……へ?」

それに一文字だけ返した方に視線を戻し、いつも以上に丸くなった緑の目を見つめる。

「いや、どんな様子かなって見にきたから、一応訊いてみた」
「何なんさ、急に」

さらっと言えば、目の前に座る彼は、鼻を横切る横一文字の傷から少し上、眉間に皺を作ってから苦笑した。

「別に、どんなもこんなも無いさ。のんびり空見たり、身体鍛えたり。あーあと時々親父とかコーチとかが来て、朝から晩までしごかれたり……」
「……相変わらずだね」

毎度ながら大変そうだなぁと此方も苦笑し、あ、と今更思い付いたように持っていた袋から小箱を取り出す。

「そういえば、これ」
「――…!」
「……偶には、季節感があっていいでしょ」

照れ隠しに笑えば、彼も歯を見せて笑う。

「……じゃあ白夢、今度は何を持ってきてくれるさ?」
「いや、今度は私がお返しを貰う番でしょ?来月、楽しみにしてるから」
「いや、その前に3月3日があるさ」
「あ、忘れてた」

でも、貴方には関係無いんじゃない?と目を細めれば、あーたにも関係無さそうさね、なんて意地悪く目を細め返されて。失礼だなぁと口を尖らせれば、楽しそうな笑みを浮かべられ。
それから何とも無く話を重ねれば、青かった空も、いつの間にか紅く色を変えていた。ああ、もう、こんな時間か。

「……また、来るよ」
「……ああ」

ゆっくり立ち上がり、暮れなずむ空を見上げてから、ふと目の前の人を見る。

「……もうちょっと、此処にいてもいい?」
「……そう訊いて、俺っちがダメって言った事、今までにあるかい?」
「……そうだね、一回も無いね」

ニッと笑いながらの返事に、此方も笑いながら座り直す。

「……これ、食べてもいいさ?」
「……そう訊いて、私がダメって言う事、あると思う?」
「……そうさね、ある訳無いさね」

そう笑んだ口に入る、一粒のチョコ。

……今度は、何を持って会いに来ようかな。

美味しそうに食べてくれる彼を前にそう思ったら、偶には、お土産無しで会いに来て欲しいもんさね、白夢、なんて、照れくさそうに天化が笑った。


- 25 -

戻る
リゼ