存在
離れてしまった、この手には君はもういない。
あの暖かい笑顔も、俺を見つめる君の瞳も、抱きしめたときの体温も、すべてがまるで夢だったんじゃないかと、そう思った。
自分勝手なのはわかってる、手を放したのは俺だから、しかたなかった、俺といることで君に心配をかけてしまう、迷惑をかけてしまう、傷つけてしまう、俺から離れたほうが幸せだってことも分かっている、だから手放した・・・・・・・・・・。
周りの音がうつろに聞こえる
金属をする音
骨が砕ける音
誰かの悲鳴
その中で確かに俺は聞いたんだ愛しい君がおれの名前を呼ぶ声を。
なぜ?
なぜ君がここにいる?
頭の中の警報が鳴った、これ以上君に近づいたら戻れなくなると。
初めて見た、君が取り乱す姿を俺に向かって投げかける言葉の数々、はたから聞けばただの罵倒にすぎない、でもなぜだろうその言葉は、君がおれのことを愛しいと言っているようにしか聞こえてならないんだ。
あぁ、そうか・・・やっと気づいた、おれが離れることで、君は俺といる以上に傷つくことを、知ってしまった、君なしでは俺がコワレテしまうことを。
ならもう一度手を伸ばそう、その先に君がいるとわかっているなら、俺はどんなことがあっても離れない。
泣いている君の手を取って誓うんだ、
絶対にもう離さない。
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