序章
桜が満ちる世界での誓い
実家で満開に咲き誇った桜の花びらを掃きながら、空を眺めていると遠き日の記憶が色鮮やかに広がる。桜で空や地が満ちる季節になると今から8年前の春休み、私は不思議な一週間を過ごした。家族にも話したけど、信じてくれたのは祖母だけだったがあれは幻なんかじゃあない。確かにあった出逢いと別れ、そして・・・・・・
『ーーー僕等が下界に降りたら、ー一つは僕等が下界に降りたら桜弥と一緒に下界の桜を見ましょう。』
『本当に!?天ちゃん、捲兄ちゃん、金蝉さんも悟空も一緒に来てくれるの?』
『おう、美味い酒とかメシ持って来てよ。花見をしようぜ』
『おい、捲簾・・・悟空と桜弥の前で酒を出すな。コイツらにはリンゴジュースを出せ』
『はいはい・・・パパは厳しいね。』
『俺、また桜弥の舞が見たいし!!歌も聴きたいなー』
『やぁ・・・やだよ・・・・恥ずかしい』
『えーーーー何でだよ!!全然、変じゃないし全然上手いのに!!金蝉だって桜弥の舞はまた見たいよな』
『まぁ、下手な踊り子の余興よりは、見応えはある・・・』
『って、言う事で桜弥は舞と歌の練習しながら、準備してろよ?』
『僕もムサイ人達よりも可愛らしい花が1輪あると嬉しいし、桜弥も金蝉の頼みは断れないでしょ?』
『み、みんなの馬鹿ァァァァァァ!!』
未だに人前で踊るのは恥ずかしいけど、あれから6年、私は祖母から認めれられるくらい上手くなった。そろそろ、彼らは遊びに来てくれるだろうか。祖母が書いてくれた神社の地図を渡していたけど、わかりずらいかな。
「悟空、やっぱり背は伸びてるかな・・・」
あの時、私は9歳、悟空は大体7歳?で私の方が背が高いしお姉さんだし。大福みたいで可愛い男の子だった悟空は今頃、13歳ぐらいだろうか。弟と同じくらいになるからまだかっこいいよりは可愛いが勝っている。一番に気になっているのはあの人。
「・・・金蝉さん、来てくれるかな」
不器用だけど優しい月明かりように綺麗な人で私の初恋でした。
「私、今なら結婚出来る歳だししイケルイケル、ワンチャンあるよね」
料理とか家事裁縫だって一通り出来るようになったし!!
悟空が義理の息子でもバッチコイだもん!!
恋に歳なんて関係ないもんね!!
「8年間越しの乙女の恋心を舐めんなよ!!」
でも、私は何も分かっていなかったんです。
天蓬さん、捲簾さん、金蝉さんは私を心配させないために嘘ついていた事も、
悟空の身に降り掛かった悲し過ぎる別れと喪失も、数多の悪意から私を護ろうとしてくれた思いも、
私はただ呑気に舞と歌の練習しながら、彼ら来るのを持っているだけで何も知らなかったのです。
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