初恋リセット



人には黒歴史がある。


その黒歴史と言うのは、文字通りダークな過去だ。抹消したいくらい恥ずかしい過去で人によっては過去の自分を殴りたくなるような悲惨なものである。



私の場合は、幼い頃に“友達のお父さんを好き”になると言うややこしい初恋したのですがこれが原因でややこしい人の地雷をブチ抜いたらしい。



「おい、俺を誰と間違えている」


「ひぇ・・・・・・」




幸せな夢を見ていたはずなのに朝目覚めたら、初恋の人の生まれ変わりにキレられました。



「なぁ、桜弥・・・・・・」


「・・・なんだい、悟空」


「なんで、今日の三蔵・・・あんなに怖いんだ?」


「最初に謝るね・・・、本当にゴメン。あれは私のせいだと思う・・・しかし何故キレられたか知らないけど」



煙草の山と殺気の針を纏った三蔵にお茶を入れる八戒さんもライターの手入れしている悟浄さんも無言だった。だって三蔵様が不機嫌だから、めっちゃ。未成年者組の私と悟空はひそひそと話していた。悟空の問いについては逆に私が聞きたい。何で朝普通に目覚めたら、美形生臭坊主の怒りを買って、お気に入りのコップを握り潰された私の心情を述べよ。答えは「理不尽」である。悟浄さんや悟空みたいに騒がしくしてないし、三蔵さんの神経を逆撫でるような発言もしてないのにこの仕打ちはなんだ。




「初恋リセット」





ぶっちゃけ言うと私の警護対象、“第31代唐亜玄奘三蔵法師”様は私の初恋の人の生まれ変わりである。魂と容姿はそのままだが性格は360度違いすぎる別人なのは分かっているけどたまに見せる優しいや仕草が胸に刺さる。分かっているんだけど、過去の思いを今のあの人に押し付けるの良くない、所詮は当時9歳の女の子の恋だし相手は煩悩を捨てて仏門に生きる最高僧だし(しかし、仏門に生きている気配が無しだが)あの恋はいい思い出だったと考えているが初恋の人の生まれ変わりとはいえ、嫌われているとなんか落ち込んでくる。


「元気ないですね、桜弥」



数日立っても、三蔵さんは私を無視するのでしょんぼりとした気持ちで八戒さんのお手伝いしていると心配した八戒さんに話しかけられた。



「そうですか?」


「ええ、三蔵に構って貰えなくて寂しいって顔に書いてありますよ」



「べ、別に寂しくなんかないですよー、何時もみたいに嫌味言われないしー、煙草臭い人嫌いだし・・・別に気にしてないもん」



強がってみてもやっぱり寂しい。いつもならちょっとした返事を返してくれるのに、「無視程きついものは無い」と誰かが言っていたが本当にしんどい。私の顔が酷いのを見かねて頭を撫でてくれる。



「あはははは、三蔵が不機嫌なのは気にしないでください。あれはただの男の嫉妬で、自分の言葉が足りないに桜弥に当たっているだけなんですから」


「男の嫉妬?なんで?三蔵の方が美形なのに?」


私がそう返すと、八戒さんは「・・・これは強敵ですね」と遠い目で空を見つめていました。女性よりも容姿端麗の美形僧侶がなんで嫉妬するの?私に嫉妬する要素ありますか?
全然無いわー、性格は破綻しているが美形男性陣に普通のJK?を入れても、ラブコメとか修羅場ハザードとか何も起きません。恋愛ゲームのやりすぎですよあはははは。と自分が思った以上に事態が拗れていることに気づていない私に八戒さんが呆れていたことに気づいたのは3時間後だった。





『桜弥
、悟空はお前一切覚えていない・・・天蓬や捲簾、我が甥金蝉童子は既に別人として生きてる。それでもあいつらの傍に居るか?』


天界にまた訪れた時、時は500年、弟みたいな友人も大好きだったお兄ちゃん達も、初恋の人も居なくってしまった。そして、観世音菩薩様からこの一言は辛かった。






ー桜弥 、三つ約束しましょうー


ー一つは僕等が下界に降りたら、一緒に下界の桜を見ましょうー



ー二つは悟空がこの先、もしも僕等が居なくってしまった時は悟空の傍にいて下さいー



ー三つ、最後は僕等の我が儘なんですが、僕等のことを忘れないでくださいー



悟空とお別れする時に5人で約束したあの日の約束を覚えているのは私だけだから。



『・・・・・・構いません、それでもいいんです。忘れ去られても、約束したから。覚えているのは私だけだから、この命が尽きるまで約束を貫き通します』



私はそうやって、あの人達の傍にいることを選んだ。でも、自分で選んだことなのに辛かった、悲しかった。覚えていないのはずなのに三蔵達はあの人達なんだと実感して、思い出してしまうのが辛い。



「・・・・・・っ」



寂しい、悲しい、怖いといろんな感情が湧き上がってはドロドロして気持ち悪くて、でも吐き出せない。誰かに当たっても、この気持ちは晴れないし、理解されないだろうなとか考えることにも疲れて目を閉じた。桜舞う記憶であの4人と一緒と過ごした日々を夢に見ながら。せめて、夢の中では笑っていたい。



泣き疲れて眠る桜弥のベッドに近寄る影一つ。月明かりが差し込むと一層その人物は金糸の髪を輝かせ、ベッドに寝ている
桜弥の涙を拭う。




「・・・・あい・・・・た・・・よ、・・・こ、ぜん・・・さん」



「ちっ、また・・・てめぇは俺を見ないのか」




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