拍手






朝晩の寒暖差が激しくなってきたこの頃、夜はまだ肌寒く上着を手放せないが昼間は日差しが穏やかでついつい微睡んでしまう。
今日だっていい天気で風も暖かくまるで太陽に優しく包まれているようだ。
なんでこんな天気の日に補修なんだろう。自宅でゆっくりのんびり過ごしたかった。
現実逃避のため思考の海に沈んでみたが結局睡眠欲に負けそうだ。眠い目を擦り教科書を開くが全然内容が頭に入ってこない。
これではダメだと開始10分足らずで諦め机に頭を預けた。
しかし自分一人が放棄したわけではない。半数以下ではあるがこの陽気にやる気を削がれボーっとただ黒板を眺めているだけだったり既に静かに寝息を立て夢の中へ旅立った者もいる。
そんな状況にも関わらず淡々と進める教師の声を子守歌代わりに俺も意識を暗転させた。

*

目を覚ますと補修はとっくの昔に終了していたらしい。また教師から何か言われそうだな。
今はガヤガヤと騒がしい。嫌いな補修が終わってみんな気が抜けたんだろう。
まぁ寝ていた俺がいうことでもないが。時計を見ればもう昼を回ろうとしていて、腹の虫も騒ぎ始めたところで財布を手に教室を後にする。
購買部で総菜パンと飲み物を買って、たまには屋上で食べることにしよう。きっと心地よく過ごせるだろう。
屋上までの階段を上り錆びかけたドアノブを捻り扉を開く。
すると暖かい春の風がひゅうと頬を撫で通り過ぎていった。思わず目を細めた。葉っぱが一枚風に乗って飛んでいった。
ちょうど転落防止の柵の下あたりに腰掛けガサゴソとパンの袋を破り一口齧る。おたふくソースがパンに染み込んで美味い。
ふと立ち上がって屋上から校庭、そしてその向こうの通学路を見下ろした。
他校の生徒が楽しそうに談笑しながら通り過ぎていく。その中に見覚えのある顔が二つ。

「あ。計ちゃん、と…西…」

珍しい組み合わせだと思った。普段計ちゃんが話しかけても何かと理由をつけて離れていくのが西だったから。
嫌いとまではいかなくても苦手なんだと思っていた。
でも今は二人とも楽しそうに何かを指さして笑いあってる。
羨ましいな、そう思うのは俺が補修を受けるために登校してるからっていう理由だけじゃない。
俺が知る限りだが、幼い頃から計ちゃんは惚れっぽかった。
今もそれは変わらずによくテレビとかのアイドルの話をするし、えっちな本もたくさん持ってる。
「かわいい」とか「胸が大きい」とか、どこか一部でも秀でていれば計ちゃん的にはストライク。
だから俺は驚愕した。だって、今までの子たちとは全然違っているから。
すごくかわいいわけでも、胸が大きいわけでもない。しかも異性ですらない。
年下で、生意気で、影があって。でも放っておけない。そんな男の子。
今まで俺は計ちゃんの恋を陰ながら応援してきたけど…今回ばかりはそれは出来ない。
だって、俺も気になってる子だから。
西だけは譲れない。本当はこの場から駆けて二人の間に入ってやりたい。
でもそれを転落防止の柵が邪魔をする。

「早く帰りてェなァ…」

屋上から二人の姿が見えなくなるまで目で追いかけて、ボソリと呟いた一言は風に攫われて消えていった。





拍手ありがとうございました。
何かございましたら↓からどうぞ!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
リゼ