1
場所は、イタリアの首都ローマ。
クリスマスシーズンが近づき、街も、人の心も浮かれていた。
ひっそり閑とした、廃ビルの角に、1人の少女が、座り込んでいる。あたし、だ。
そこに、1人のおじいさんがやって来る。
─どうしたんだい?こんな所で…。お父さんか、お母さんは?
…いないよ。あたし、ここにずっと独りでいるの
寂しくは、ないのかい?
寂しいよ…でも、仕方ないの
そうか…。じゃあ、私が、君に、居場所をあげよう
一緒に、来るかい?
……うん!
ピピピ、ピピピ
真っ白な部屋で、無機質な電子音が、朝を告げた。ベッドに入る前に力尽き眠ってしまったあたしは、目覚まし時計の第一声と共に目を覚ました。
『(…またかぁ…………)』
最近、あたし、早川ひかるは、頻繁に同じ夢を見ています。あたしが、おじいさんこと、ボンゴレファミリー9代目に拾われた日の夢を。
コンコン…
「失礼します、ひかる様。9代目が、お呼びで御座います」
『9代目が?』
9代目が呼び出しなんて、珍しい。
何があったんだろう
「はい。何でも、急ぎの用事だそうで…」
『(急ぎ…?)分かりました。すぐに伺う、と、伝えておいてください』
「かしこまりました」
目を閉じて、少し先の未来を覗く。
…─ジャッポーネ…10代目…
『?』
ジャッポーネ?10代目…沢田綱吉くん?
何が何だか、分からない
『とにかく、急がないと…』
あたしは、ハンガーに吊るしてあるスーツに着替えて、部屋から出た。
- 2 -