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――ザパンッ!!





一気に力が抜けて息ができなくなった。
思ったより水が痛くなかったかも。
シャチが庇ってくれたのかな。
水中にこれたのもシャチのおかげだし、感謝ふれふれ雨あられ。


全身の冷たい感触に目を開けるとシャチの肩が見えた。
水上を見上げると数年間見れなかった透明な世界。
夕焼けでオレンジに染まった海水がキラキラと輝いていた。


辛うじて自由に動かせる腕を伸ばしてみるけどもやっぱり届かない。




『(無音…だなぁ……。)』



冷たくて静か。
下は暗く上は明るい。


苦しくて、気持ちいいのはいつの時代も同じ。



ねぇルフィ…あんたは泳ぐの苦手だったよね。
けど、海の中はスッゴく心地好いんだよ。


昔無理矢理海に入れようとしてよく泣いていたね。
あたしはこの綺麗な海を見せたかっただけなんだけど、今思えば言葉も足りなくて強引だったかな。

あたしはもう一人で潜れなくなったけど、ルフィは潜れるようになったのかな?

次に会えた時には一緒に潜れたらいいね…。




暫く味わえないであろうこの感触、風景をあたしは全身に刻んだ。


















――――……
















ベポが罵られた。

叫んだ瞬間に女の運命は決まっている。

まだギャンギャン騒ぐ女をバラバラにしてやろうとしたら俺と女を遮るように氷が飛んできた。




視線をさ迷わせると俺と向かい側にあたるベンチにビキニを来た女が座っている。

いや、俺には一目でそれが名前だとわかった。

ベポも名前に気付いたようだ。


名前は俺達に手を振ると側にいたガキに持っていたパチンコと林檎を渡して見送っていた。





「キャプテン、俺もう行くね…。」


ベポは蚊の鳴くような声で呟くと名前に向かって走り出していた。





「あの氷、名前があそこからあてたのか…?」


「スゲー命中率!」


「というかビキニが…。」


「バッ…!船長がいるんだぞ!?」


「お前ら聞こえてるぞ。」



後ろでざわめき立っていたクルーを一睨みして黙らせる。


次に見た瞬間にはベポが名前を抱きしめていた。
背中が震えていることからして、恐らく泣いているのだろう。


「……。」


「船長、落ち着いてくださいよ。」


「落ち着いている。」


なだめたペンギンに嘘を吐いた。
本当は怒りで腹腸が煮え返っている。

まぁバレているんだろうけどな。




「……!」



ベポの肩越しに名前と目が合った。
名前の目も潤んでいた。
ベポを落ち着かせるように背中を撫でている。








「ペンギン。」


「はい。」


ペンギンも泣いているベポと名前を見ていた。
考えていることは同じなはず。




「そいつら連れてこい。」



ペンギンは逃がさないように女の腕を掴むと裏路地に引きずりこんだ。













(空は赤に染まる一歩手前)
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リゼ