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「ごめ、も一回言ってみ?」


『だから!あたしを抱えて崖から飛び降りて!』


「聞き間違いとか…。」


『ないね。』


おいおいおい。
確かに俺はなんでもするとは言ったけどこれは…。



「ま、また今度『さ、早く早く!』今からかよ…。」


少し赤くなった目で満面の笑みを湛えながら名前は俺の腕を引っ張っていく。



「今からスイカ割りするんじゃなかったのかよ?」


『水中波乱のランデブーした後からでもいいじゃん。』


悲しいことに踏ん張ろとしたけどズルズルと引きずられていく。
こいつどんだけ力あるんだよ!?


あ、だからスイカ割りにもあんなに自信があったのか。
俺は今納得したぞ。


そんな事を考えている間についに崖っぷちまで連れてこられた。



「いや待て、落ち着け!!」


『落ち着くのはあんただよ、シャチ。』


全くだ。


「よく考えてみろよ、名前は能力者だ。」


『うん。』


「海に入ったら溺れるんだぜ。」


『うん。』


「ぶっちゃけ俺が名前の元気を出すために飛び込んだとしても名前は一緒に飛び込む必要なくね?」


『だからあたしを連れて行くことが目的なんだって。』


…なんと。


「上にスクロールしてみろよ、デメリット書き綴ってあるからもう一回読んで来い。」


『うっさいよ。

あのね、あたしはちっさい頃から海が好きだったわけ。
よく潜っていたわけよ。
それがどうよ、悪魔の実食べてから水につかるだけで力は抜けるし溺れるしで全く海に触れられてないの。
けどね、誰かがいたら潜れると思うんだよね。
つーまーり!!』


名前はビシィ!!っと音がつくくらい俺を指さした。


『水泳が上手そうな海賊がにいる、目の前には海、空はいい感じに夕焼け、オマケにお互い水着ときた!!
こんな好条件滅多に揃わないと思うんだよねあたしゃ!!』



うわぁ…。
さっきまで泣いていたのが嘘のように笑顔が輝いてらぁ…。
女の一番の化粧は笑顔だって聞いていたけどあながち間違っちゃいねぇな。



『さぁシャチ!いざ水中波乱のランデブーへ!!』


「さっきから何だよそのツアー名は。」


はぁ…これ腹括らなきゃいけない感じだよな。


とにかく何が何でも水中で名前を離してはいけない。
これだけは自分の胸に刻んでおくとしよう。


「名前に何かあったらその女の二の舞になるんだろうな…。」


『ん?何か言った?』


「いーや。」


下を覗き込んで高さを確認してみる。
見た感じ危ない岩とか何もない。



「それ外しとけよ、簪。
水中で抜けてもそんな細いの探せねぇからな。」


『はーい。』



名前はパーカーを置くとその上に船長から貰ったという簪をそっと置いた。








「おっし来い!!」


『あいよ!!』



ギリギリ先まで行くと名前を離さないようにギュッと抱きしめた。


……意外と俺にとって毒だったかもしれない。
さっきから名前の胸が当たっている。
けど今更そんなこと言えない。






『あ、ローさ、』


「行くぜ!!」


名前が何か言っているように聞こえたけど無視して名前命名水中波乱のランデブーへの第一歩を踏み出した。













(空が赤かった)
 
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リゼ