#花籠(Ace)
『いらっしゃいま…あぁ。』
「おーい、俺は客だぞー?」
『申し訳ありません。何かお探しでしょうか?』
「あ、いや、やっぱり何時も通りでお願いします。」
エースは猫っ毛をフワフワさせながらカウンターまで歩いてきた。
「今日はちゃんと買い物しにきたんだっつーの。」
そう言ったらエースは早速花を見て回った。
「どれかお勧めある?」
『そうだなぁ…誰かにあげるの?』
「気になるか?」
『知らなきゃどんな花がいいのか分からんだろうが。』
「とりあえず女だな。」
『年は?』
「名前と同じ。」
『ははぁ…。』
ついに本命の女の子を見つけたのか、幼なじみとして嬉しいよ、お姉さんは。
…あたしの方が年下だけど。
『なに、告白すんの?』
「ん!?なんでだ!?」
分かりやすいんだよ、エースは昔っから。
「…名前だったらどんな花がいい?」
『あたし?あたしだったらねぇ…花束じゃなくて籠がいいな。』
「籠?」
『バスケットみたいなの。ほら、これ。』
売り物のところから籠を取り出してエースに見せる。
「ん…じゃあそれにする。花は…。」
エースはプレゼントスタイルだけ決めると再び花に向き合った。
「あのさ、」
『うん?』
「名前は今日何時に家に着く?」
『今日は7時前には着くんじゃない?』
「ふーん…。」
選び終わったエースから種類を聞いて籠に入れていく。
「それ宅配してもらえる?」
『直接渡せよ!!』
「まぁまぁ!」
なんて言ってるエースに押されて結局宅配することに。
『はい、ここに宛先書いて。』
差し出した紙にエースは迷うことなく住所を書き込む。
「…よし、じゃあよろしく!」
『んー。……は?』
これ。あたしの住所なんですけど。
「じゃあまた後でな!」
それだけ言い残してエースは去っていった。
『あらら…これはもしかしなくても…。』
この出来事があったおかげで夕方まで仕事に集中できませんでした。
花籠
(家に帰ったら判子出しとかなきゃ)
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