14
ふと目を覚ました瞬間、身体の節々が痛かった。
きっと寝慣れない場所で寝ていたからだろう。
焚火が消えかけていたから慌てて傍にあった薪を焼べる。
トラ公を起こさないようにそっと抜け出した。
寝る前は夕暮れ時だったはずなのに今は暗闇一色だった。
向こうの世界は夜でも光が沢山あった。
でもこの世界は光が無い。
いや、無人島だから仕方がないんだけど。
『うわぁ……さむっ!』
昼間は春みたいに暖かかったのに気温が下がっていた。
『(ちょっと散歩行ってきまーす…。)』
松明を一つ作成して葉の余り多くない道を選んで歩き出した。
サザーン………
どうやら洞窟の傍に海があるらしい。
さっきから潮の香りと波の音が聞こえくる。
『……綺麗………。』
ホントに近くにあった。
これなら迷わずにトラ公の洞窟に戻れそうだ。
『よっこらしょ。』
おばさんくさい掛け声と共に砂浜に腰を下ろす。
ユラユラ波が穏やかに行ったり来たりを繰り返している。
月の光が水面に反射してとても幻想的な景色だ。
『(眠たくなってきた…。)』
しばらくボーっとしていたら足音が近づいてきた。
トラ公…にしては大きいな。
ハッとして後ろを振り向けはすぐ後ろにまだ記憶の中に新しい姿が在った。
『トラファ…………なんだっけ?』
「テメェ……。人の名前くらい覚えろ。あのガキ猫が言っていただろうが。」
『すいません。名前覚えるの苦手で。』
ガキ猫とはおそらくトラ公の事……と解釈しておこう。
「トラファルガー・ローだ。覚えておけ。」
トラ……?ト、トラファルガー…?
『トラ…フぁルガーさんどうしたんですか?道に迷ったんですか?』
「もう少し滑らかに発音しろ。」
『んな横暴な。』
あの時みたいにサークルを出してくる気配もなく、ただそこで彼は立っていた。
「そんな格好で何やってんだ?」
『これ、トラ公のですよ。
あたしは眠れないからちょっと景色見に来ただけです。』
「奇遇だな。俺もだ。」
初対面に等しいあたし達がどうしてこんな世間話?
更に足音が近づいてきた。
「あんなガキ猫が人間の服を使うのか?」
『らしいですよ。』
(ちょっと緊張)