Endorphin Pleasure(銀近)

◇注意◇

今作品の近藤さんはかなり真っ黒です。
頭から爪先までブラック無糖です。
そんな近藤さんでも大丈夫! というバイオレンスな大人のお姉さんはどうぞ先へお進み下さい。
漢でお人よしな近藤さんを壊したくないという生粋の近藤さんファンの方は、このままプラウザバックしてください。

◇準備はいいですか?◇




「……おいギンヤンマ」

ギンヤンマって…。
ひどくね。せめて虫以上の生命体にしてくださいよ。

「ギンヤンマ、どいて」
「ゴリさんたら、たかがギンヤンマの重さで音ェ上げちゃうの」

意地悪くそう言うと、近藤はぶすっとして黙った。んな顔してっと戻らなくなんぞ。
俺は笑いながら眉間の皺を撫でた。
疲労からかはたまたただダリーだけか、近藤はしかめ面のまま目を閉じる。
しかし。

「煙草吸いてぇんだよ。どけって」

全く、もうコレだ。高校生は煙草吸っちゃいけませんて法律知ってる?
おまけにお前はあの近藤ちゃんでしょうが。天然で体力バカで、みんなに愛されるゴリラじゃなかったの。

「何ブツブツ言ってんの。きもい」

きもいって! やめて、お前いつから女子高生になっちゃったわけ。
お前ってば女子高生にはすこぶる評判の悪ィ汗くさい奴だったはずだろーが。
先生悲しくなっちゃって厚い胸板に特製のフワフワ毛玉を押し付ける。
ウザそうに舌打ちが聞こえた。

「じゃあ先生が吸わして。煙草取って火ィつけてよ」
「お前ってほんっと見た目を裏切らない奴な…」
「ンだよ、ヤン顔って言いてーの」
「ヤン顔ってかヤーさん顔に見える」

俺の低い声に、近藤は本日初めて笑う。
見た目だけ見りゃメンチ勝負なんか余裕で勝てんだろ、こいつ。
初対面では内心びくついてたのに。うわぁ強面の奴がいるよ銀さん怖ーいってよ。
それがいざ担任になってみたらバカでアホで…そんでも公序良俗を絵に描いたようなお人よしだったのに、なァ。

「ハイ」

ため息をつきながらも俺は、親切に煙草を近藤の厚い唇にくわえさせ、ライターで火をつけた。
ライターの明かりに照らされた近藤の顔は、ようやく鎮まった息子が疼きそうになるほどいやらしい。
俺も吸おうと手を伸ばして、あ、と思った。

「ゲホッ、なんだコレ、甘っ」
「わりーわりーそれ俺のだったわ」

暗くてよく見えなかった手元が掴んだ俺の煙草は、近藤には相当甘いらしかったが、ぐちゃぐちゃ言いながらも灰皿へ押し付けることもなく。
それどころかいざ吸えば美味そうにふかしてやがる。
なんて考えていると。

「あぢィ!」

首の後ろ側に、鋭い熱さが走った。
がばりと起き上がって首をさすると、何か小さなクズがぽろぽろ落ちる。多分焼けた皮膚と煙草の灰だ。
「もー何すんのよ」

脱力して近藤の横に寝転がって、増してくる痛みにため息が出る。

「……キスマーク?」
「何で疑問系…。つか、どこの世界に根性焼きでキスマーク残す鬼畜国家があるわけよ」
「ハハ、何言ってっかわかんねぇ」

近藤はそれでも愉快そうに笑って、まずいまずいと言いつつすぱすぱ吸っていた。
俺もこれ以上何か言うのは諦めて、息をつく。可愛いかったはずの俺のゴリラはどこに行っちまったんだか。

「つーか先生さァ」
「あん?」

女だったらマニキュア塗りながら言ったみたいなさりげなさのある口調だった。
だから、俺もさりげなく聞き返す。

「こん前トシとちゅーしたろ」

ちゅーというかわいらしい響きも打ち消されるほど、それは衝撃に満ちた言葉だった。
ちょうどくわえていた煙草が、何の前触れもなく布団に落下する。ライターだけがむなしく手の中にあった。
俺は近藤のほうを見られなかった。心臓が爆音を鳴らし始めている。

「…見てた?」

沈黙に耐え兼ねた俺が平静を装って聞くと、近藤は煙をプハーと吐き出した。

「いや?」
「なら何で」
「トシに聞いた」

あのヤロ…!

「んで?」

さりげなさすぎんでしょ、お前。
銀さんがここまでしてやられるなんて、それも皆大好きゴリラさんに。

「せーんせ」
「…あいつに聞いたんなら理由も知ってるんじゃねぇの?」
「知ってるよ」

遭えて俺の口から言わすってか。
ほんといい性格してるよ。近藤クン。
でもここは何とか大人の意地で耐えてみた。銀さん偉い。

「なんでオメーみてぇのが近藤さんと付き合ってんだよ、って」
「ふーん」
「大人だからですよ、と」
「ふんふん」

近藤は大して興味もなさそうなのに、先はきっちり促してくる。
首の後ろに手をやった。焼けた皮膚がチリリと痛む。

「大人だからですよ、と」
「ふんふん」

近藤は大して興味もなさそうなのに、先はきっちり促してくる。
首の後ろに手をやった。焼けた皮膚がチリリと痛む。

「大人なんかカンケーねぇだろとアイツが言って」
「……」

ついに近藤は返事すらしなくなった。
かわりに俺がくわえさせた煙草を消している。
電気、ついてなくてよかったネ、俺。
ついてたらいくらスーパーでハイパーな銀さんだって心が折れる。

「じゃあ大人の証拠見せてやるよっつって」

“近藤がメロメロになる、俺特性の大人のキスだ”

あのときは確かそう言った
今思えばガキ相手に嫉妬の炎めらめらじゃねぇか。
ここは省くことにする。

「で、したわけ? 大人のキス」
「まぁ…したな」

手の中からライターが奪われた。
上目で見れば近藤はまたもや煙草をくわえている。シュボ、と音がした。
それからしばらく近藤は無言のままで、煙草をふかしている。
…このケムい中にもある甘ったるい匂いは。
俺のだ。テメーの吸えや、とは当然言えなかった。
状況が状況とはいえ、俺は浮気をしたわけである。

「多分トシ、そのキスで先生に惚れたよ」

そして近藤は更に爆弾を投下した。

「は」
「ずっと俺のこと見てたのに。先生に取られちゃった」

絶句した。こいつは本当にあの近藤勲なのか?
しかも土方が、俺に惚れたって、一体どんな証拠があって…。

「銀時にキスされた。どうしよう近藤さん、俺なんか変だ」
「……?」
「先生にキスされたあと、俺に言ってきたんだよ。顔赤らめながら」

普通男にキスされたことを男に言うかよ。しかも自分が好きな相手にわざわざ。
それって、土方のカワイイ嘘なんじゃねぇの?
近藤と俺の仲に割って入るための、いかにもガキらしい愚かな嘘。
俺が黙ったままそんなことを考えていると、不意に近藤の白目がこっちを向いた。
その瞬間。

「い″ッ」

背中にまたもやあの熱さが襲った。
今度は触れた程度なんてモンじゃない。
確実に力を込めて押し当てられている。
飛び上がろうとしたが、ケツに近藤の足が乗ってきて動けない。
くそったれ。

「先生だってさ、自分のオモチャ取られたらイヤな気分だろ?」

土方……お前なんつー奴に惚れたんだ。
俺もだけど。

「だからコレは誓いってことで」

背中から熱さが消えた。その代わり猛烈な痛みが襲っている。
焦げてるよ、絶対焦げてる。銀さんのスペシャルボディが。

「二度と俺のオモチャに触らないこと。二度と俺以外とちゅーしないこと」

近藤は満足そうにそう言うと、俺の皮膚であったものがこびりついているであろう煙草を、躊躇いもなく吸い出した。
甘い甘い、俺の煙草を。
口の中に苦い味が広がった。
ああ、クラクラする。
こんな短慮で鬼畜なだけの高校生に心底惚れている俺は恐らく、世界一哀れで世界一幸せな奴だ。

鎮めたはずの欲が、再び頭をもたげた。



◇◇◇



「はい先生! 僕は何が分からないのかわかりません!」

俺に指名された近藤は、勢いよく言った。
クラスは笑いに包まれる。
土方も笑っていた。

「よーし、廊下でスクワット一千回してこい。頭が冴えるぞ」

平和な教室
平和な授業。
誰も気付かない毒は、そうだ、やっぱり気付かねぇうちに回っている。

「先生! 僕の頭はもう冴えてます!」

毒は今日も広がる。
俺も日々侵されていく。

「じゃあスクワット五千回してこい。お利口さんになれんぞ」

アドレナリンが。
大量に。
ああ、俺ってばかなりやばい。
頭ん中ラリってる。

「先生! 僕はいつだってお利口です!」

知ってるよ。
くそったれ。





おわり






―――――――――――――――――――
銀近であまあまいちゃいちゃは無理な気がする。
絶対どっちかがオツムのネジぶっ飛んでる気がする。
そしてこう見えてもこの話の近藤さんは私の中じゃドMです。
某サイト様の銀近を読んで衝動的に書きました。ごちそう様でした。

「Endorphin Pleasure」はそれっぽい単語をくっつけただけで意味はないです。
Endorphin はアドレナリン、Pleasure は快楽です。エキ〇イト翻訳で検索したら出てきました(笑)
- 28 -

[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ