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拍手ありがとうございます!今回のお礼文は、精霊の詩、『侯爵マルコシアスE』となっています。
消える悪魔を冷ややかに見つめていたマルコシアスだが、振り返った彼は笑みを浮かべていた。先程の氷を彷彿とさせる気配など微塵もない。物腰も柔らかな『腰抜け』マルコシアスそのものだ。見つめられた客人が恐怖からか、思わず後ずさりする。
「ひっ……!」
「心配なさらずとも何もいたしませんよ。貴方はあくまで『彼』に唆されただけ、ですね?」
「え、ええ……! そうですとも!」
マルコシアスの言葉に気をよくしたのか、震えていた悪魔は、尋ねもしないのに色々と喋ってくれる。最初から気乗りしなかっただの、弱みを握られて渋々協力しただの、よく回る口である。にこやかに相槌を打ってやると、息を付く暇もなく喋ってくれるのだから有り難い。
この悪魔は明らかに小物であり、大した力もない。一人ではルシファーに反旗を翻すなど考えもつかないだろう。ここで小物一匹を消すのは簡単だが、それでは意味がない。まさか悪魔も微笑むマルコシアスが、そんな物騒な事を考えているとは夢にも思っていないだろう。
「ルシファー様は裏切り者には厳しいお方ですが、とても寛大でいらっしゃいます」
「で、では……」
「ですが、次はありません。良いですね?」
「もちろんですとも! 流石はルシファー様。わたしのようなものにまでお優しい」
釘を刺されても何のその。小物はしたたかである。
そそくさと姿を消した悪魔を見送り、マルコシアスも転移した。いつまでもここにいる理由がないからだ。
パイモンの宮殿のど真ん中に出るのは礼儀に欠くため、宮殿前に出て彼女への取次ぎを頼むと、すぐに謁見の間に通された。謁見の間には玉座に腰掛ける美女、パイモンとゴモリーの姿もある。彼女は昔から嫌に勘がいい。マルコシアスが来る事を感じて待っていたのだろう。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、マル」
「ご苦労さまでした。マルコシアス。早速ですが、仔細を聞かせてもらいましょうか」
首を垂れたマルコシアスは、一部始終を二人に語った。ゴモリーは微笑を浮かべて話を聞いていたが、パイモンはその美しい顔を歪めている。ルシファーの腹心であり、彼に忠誠を誓う彼女にしてみれば、あんな輩は許しがたいのだろう。
続く
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