消極的な恋をしてるから バトン C
 2014.05.23 Fri 17:15


・逢えなくなるならそれでもいい⇒髑→雲で、クローム独白10年後


ただ、ただ、映りたいだけだった。骸様しかいないその瞳に、一瞬でいいから映りたいだけだった。そのためならこの命を捨てても構わなかったの。例え貴方に二度と逢えなくなっても。ううん、逢えないからこそ成り立った。骸様に救われた命で、恩知らずだということもわかっているけど、それでも。”ちょっとっ、ねえ君!”目の前には必死になって私の身体を揺さぶる雲の人。腹部からの大量出血は痛みを伴いながら視界をぼやけさせる。今は未だ聴こえる私を呼ぶ声もその内遠ざかっていくのかしら。”何で僕を庇ったの!”悲痛な怒鳴り声。貴方は予想もしていなかった結末でしょうね。ああ……だけどその問いに私は答えられない。声は出せるけど言葉にしてまで裏切りたくはない。もうすぐ医療班が来る。私は助からないだろう。知ってる。それでも構わない、たったひとつの願いのためなら。貴方は部下に用意させた布を巻いて止血してくれている。容赦なく流れる血は留まることを知らない。貴方を嘲笑うかのように、私の死を待ち望むかのように。貴方の手まで真っ赤に染めてしまう…ね。それは望まないのに。汚したいわけじゃないのに。骸様への裏切りは一度だけ、お役に立てないまま命を投げ出したこの一度だけ。許さないでください。愚かな行為を、骸様の人形で在れなかったことを。最悪の形で裏切った、私を。ああ……全ての色が音が闇に潰えていく。とても寒くて寒くて心まで震えた。”死ぬなッ!!”荒げた貴方の声もひどく遠い。これ以上は何も知られたくなくて三叉槍を手放した。きっと全て気づかれているから無駄なことでしかない。例え此処に骸様がいたとしても私の助かる見込みはゼロ。それだけは敵に感謝したい気分。おかげで私は逝けるから。この日をずっと、待ってた。貴方と二人だけの任務、この日をずっと。私が取った行動が貴方を少しでも悩ませたらいい。でも、本当は……ねえ、本当は…貴方と。


ーー恭、弥…。


堪え切れず最期に呼んでしまった名は、秘めやかなる心。一度も呼ばなかった名、命の燈消えるというのに残してしまった。彼の方へ、裏切りを増やし。…ああごめんなさい。胸が締め付けられる。貴方はどんな表情をしているの?…ああもう見えない。後悔に押し潰されそうになりながら、襲い来る最期の睡魔に目を閉じるしかなかった。(永遠に答えの見つからない謎を貴方に)





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