亡者を追う君に、契約の死を渡せば救われますか? 完結


「一途?違うよ。お前の言葉で言えば、そんな生温いモノなんかじゃない」


彼の双眸は、憎らしい程に強い光を放っている。僕が無意識に差し伸べた手は容易く振り払われた。
僕は雲雀恭弥の代わりにもなれはしないのか。無力と絶望を思い知らされるのは、こんな時だと思う。


「ボンゴレ、地獄で彼に会わせてあげましょうか?」


「地獄……彼は、やっぱり地獄に行ったのかな。マフィアだしね」


全て言わなくてもわかっている。彼が、今更になって後悔していることを。
言葉にしては禁句だけれど、思うことなら許されると考えるのは彼の甘さ。


「どうします?僕と契約しその身体を寄越せば、雲雀恭弥に必ず会わせることを約束しましょう」


普段の彼ならば、こんな取引をするはずがない。これは、彼の限界を見極める仕掛けだった。
彼の身体を乗っ取ることを狙っていたはずなのに、今は首を横に振ってほしいと切に願っていた。


「そうだね、お前は嘘をつかないし」


彼は万更でもないといった笑みを僕に向けた。胸の奥が酷く痛む感覚を、僕に植え付けていることも知らずに。


「どうします?」


返答を急かすのは、肯定の言葉を聞きたくないという身勝手な理由から。今の彼を殺したくないと、そう、本当は心まで――――


「ボンゴレ、貴方に生きる理由をあげましょう」


「え?」


「貴方が天寿を全うすれば、来世は雲雀恭弥と共に平和な時代に転生できるようにしましょう」


「そんなことでき「出来ますよ。僕は六道を廻ってきたんです。生も死も、簡単に捻曲げられる」


「でもっ、雲雀さんは今の俺を「お望みなら前世の、つまり今の記憶を持ったまま来世へ転生させます。どうです?」


彼にとってその提案は過酷で、ある意味魅力的かもしれない。彼は雲雀恭弥のいない世界を生きる代わりに、来世での確実な幸せが保証されているのだ。
もっとも、その提案内容を信じられなければ何の意味も為さない。


「……長いな。あの人のいない世界でずっと」


「今死んでも構いませんが、死後再会できる保証は何処にもありませんよ」


それは、僕の提案にもいえることだ。でも、彼のためならこの身を犠牲にしても、必ず成し遂げる自信がある。
だから、どうか―――





「……わかった。その代わり、お前は俺が天寿を全うするまで傍にいろ。俺の身に降り掛かる災いは、お前が全て薙払え。それができずに朽ちたら、俺はあの人の元に行くッ!」






遠回しに告げられた、提案の肯定に安堵する。言われずとも、彼を害する対象を全て滅ぼすことに変わりはない。


「誓いましょう。貴方の盾となることを」




その場に跪き、目の前にある彼の手の甲に口付けを落とす。




頬を伝う彼の涙を、拭うことすら許されぬままに。





fin
- 4 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ