沈黙ののちに瑠璃の脳内に響いた言霊は信じがたいものだった。瑠花とは、瑠璃の1つ下の従妹(イトコ)である。あの強力な“力”を持った瑠花が失敗など、どんな“仕事”であろうか。
「は?どういうこと!?」
[“虐め”の仕事だ。どういう訳か全く“力”を使わずして逆に虐められた様でな]
「瑠花が虐められた!?っ何考えてんだよ糞親父!!瑠花は…瑠花は!!瑠花に“虐め”なんてそんな…!瑠花に他人を裁くことが出来る訳ないだろ!!あの心優しい瑠花が!!それで、瑠花は今…」
[学園の医務室だ。ノイローゼになってしまってな]
「癒医(ユイ)のところだね!?僕今から学園に帰るから!」
 瑠璃はそう言うと、その場から消えた。“瞬間移動(テレポーテーション)”だ。癒医とは、学園の校医兼生徒の赤井癒医(アカイユイ)のことである。
 それを見ていた誠也と貴文は嘆息をついた。
「んだよ。まだ帰んないんじゃなかったのかよ」
「……とりあえず、」
 貴文は瑠璃がつい先程までいた教室に目をやる。
「“事後処理”。…しなくちゃな」
「俺は管轄外だから任せた」
「おう。貸し一つな」
「俺じゃなくて瑠璃にだろ」
「そういうことにしといてやるよ」
 貴文はスイーッと教室の窓へと近づく。教室の中がざわついた。
「おい!!誰か来たぞ!」
「ねぇ、水野さん消えたよね!?」
 そんな中、1人の女生徒が口を開いた。
「…あなたも、水野さんと同じ……?」
「そう。俺は氷河貴文。二つ名は“聖氷の貴文”」
 ニコッ、と笑う貴文。
「“この学校の、時間よ止まれ”」
 貴文がゆっくりと言うと、教室にいた生徒たちの時間が止まった。ふと教室の時計を見やれば、止まっていた。ほかの教室の生徒も教師も、石像のように動かない。
近くの小学校のチャイムが、鳴り響いた。
「“この学校の者全ての、我が聖霊学園の生徒に関する記憶、一切消えよ”」
ひゅーっ、と誠也が口笛を吹いた。
「誠也、」
 貴文と誠也は、屋上へと飛び上がる。
「“この学校の時間よ、再び動き出せ”。……さて、帰るか」
「おう、」
「にしても、瑠花が虐められるなんてな」
「…そうだな、」
「今度の“仕事”は長引きそうだな」
「あぁ、」
「“瞬間移動”」
リゼ