「ちっくしょ。また瑠璃の奴だけ楽しそうな“仕事”しやがって。俺なんか地味な仕事しか回って来ないってのに……!」
明らかに苛立った様子の、派手な赤い髪をした少年。年の頃は瑠璃と同じか、その上といったところだろうか。
「“聖火(セイカ)の誠也(セイヤ)”はいつもそうやって“聖水の瑠璃”に突っ掛かる」
そう言ったのは、銀髪の少年。誠也と呼ばれた少年はますます苛立った様子だ。
「んだとぉ!?」
銀髪の少年は、名を貴文(タカフミ)という。二つ名は、“聖氷(セイヒョウ)の貴文”。彼らは、瑠璃のいる教室の窓の“外”、窓よりも高く、中が見えるくらいの高さのところに“立って”いた。
「誠也は瑠璃のこと好きなんじゃ…」
ないの?と続けようとしたが、こちらを睨む視線を感じたので、誠也を見やる。
「…何?俺に文句あんの?」
「ありまくりだっての。あんたの氷溶かしてやるよ」
「俺よりランク低いくせに出来るかな?ま、出来たとしても溶けて水になった俺の氷はお前の炎を消すだろうけどな」
「やってみるか?」
「何?殺られたいの?」
「…それはこっちの台詞だぜ、貴文」
貴文の先制攻撃だった。先の尖った氷柱が誠也に向かって飛んで行く。
「…“火の粉”、」
誠也がそう言えば、火の粉が舞って誠也を覆い隠す。
「ワォ、結構やんじゃん。誠也のくせに」
「…どういう意味だよ」
教室がざわざわし始めた。
「人が浮いてる!」
「何か飛ばしてるぞ」
「一体どうなってんだ?ありゃ」
「…ったくあの馬鹿共…。場所を考えろ場所を」
瑠璃は、溜め息をついて顔を手で覆う。
ひゅうっと教室に風が吹き込んだかと思うと、窓が突如開いて瑠璃が飛び出していた。空に向かって。
「…水野さんまで…浮いた……?」